1953年2月28日、韓国のマスコミは、アメリカが韓国側の要請により竹島の空爆演習を中止したことを受けて、それを「アメリカ政府が竹島を韓国の領土として認定した」と報道します。
一時期、『獨島』の漁民を恐怖の中におとしいれていた『獨島』周辺攻撃演習は、韓国と国連軍当局との合意で、隣接する住民達の不安を一掃することになったという。昨二十七日、軍当局が発表したところによれば、去る九月十五日、国籍不明の飛行機の爆撃事件以来問題であった独島は、その間我が政府と国連軍当局間に完全合意を見て、アメリカ政府としても獨島は韓国の領土の一部であることを認定し、今後、獨島付近には爆撃がないことを米極東総司令官により保障されたとして、爆撃により大打撃を受けてきた漁民達も、今後は安心して漁労に従事できるようになったという。(翻訳はchaamiey氏とmatsu氏による)
それを受けて、国会でこの件が審議されます。以下は、その日とその後に行われた国会の審議記録です。現在活発な議論が行われている事柄に関することが多々含まれており、当時の日本政府の認識、竹島問題に対する姿勢が見られる内容となっています。議論の参考にと情報を頂きましたので、投稿します。
(申奭鎬「独島所属について」『史海』創刊第一号(1948)での議論の続きはこちらでお願いしたいと思います。)
一時期、『獨島』の漁民を恐怖の中におとしいれていた『獨島』周辺攻撃演習は、韓国と国連軍当局との合意で、隣接する住民達の不安を一掃することになったという。昨二十七日、軍当局が発表したところによれば、去る九月十五日、国籍不明の飛行機の爆撃事件以来問題であった独島は、その間我が政府と国連軍当局間に完全合意を見て、アメリカ政府としても獨島は韓国の領土の一部であることを認定し、今後、獨島付近には爆撃がないことを米極東総司令官により保障されたとして、爆撃により大打撃を受けてきた漁民達も、今後は安心して漁労に従事できるようになったという。(翻訳はchaamiey氏とmatsu氏による)
それを受けて、国会でこの件が審議されます。以下は、その日とその後に行われた国会の審議記録です。現在活発な議論が行われている事柄に関することが多々含まれており、当時の日本政府の認識、竹島問題に対する姿勢が見られる内容となっています。議論の参考にと情報を頂きましたので、投稿します。
(申奭鎬「独島所属について」『史海』創刊第一号(1948)での議論の続きはこちらでお願いしたいと思います。)
昭和28年02月28日 第015回国会 衆議院 外務委員会 第21号
○中山(マ)委員 本日の発表によりますと、韓国の国防部が日本の沿岸から二百四十キロのところにございますところの竹島、これをアメリカ側がはつきりと朝鮮の領有に決定をしたということがいわれておりますが、この問題につきまして、外務省として、アメリカ側からこの問題に対する通告があつたかどうか、もしあつたといたしますならば、それに対して外務省としてはどういう態度をおとりになつたか、ここにおちつくまでの経緯を御説明願いたいと思います。
○岡崎国務大臣 そんな通告は全然ありませんし、従つてそこにおちつくとか、おちつかぬということも全然聞いておりません。
○中山(マ)委員 それでは、これは釜山からの通告のように出ておりますが、この新聞の記事は事実無根と考えてよろしゆうございますか。
○岡崎国務大臣 事実無根かどうか、つまり外務省なり日本政府なりは、全然承知しないことであります。
○中山(マ)委員 それではこういうことが、言われておるのでございますから、外務省といたしましては、韓国はこのごろは非常に行き過ぎのように私としては考えられますので、この行き過ぎを是正するという意味で、アメリカ側にこのことを申入れていただいて、そうしてぜひそういうことを一方的に発表してもらわないように、ひとつアメリカ側から御忠告を願うようにしていただけるかどうか。
○岡崎国務大臣 アメリカはイギリスとともに平和条約の提案者でありますから、アメリカにそういう話をするということもさしつかえないわけでありますけれども、平和条約ですでに日本の領土に関しては、きまつておりますから、どこの国が何を言おうとも別に意に介する必要はないのでありまして、われわれは特にアメリカに頼まなければならぬというほどの必要も認めておりません。
(注)
※中山(マ)委員:中山マサ衆議院議員(自由党1950)
※岡崎国務大臣:岡崎勝男外務大臣
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昭和28年03月05日 第015回国会 参議院 外務・法務委員会連合審査会 第1号
○委員長(徳川頼貞君) 只今より連合委員会を開会いたします。
議題は竹島の領土権に関する件であります。竹島に関しましては平和条約により日本領土であることは明白であると考えられておりますが、去る二月二十八日の毎日新聞によりますと、韓国国防部の発表として、韓国が竹島の領有権を持つことを米国が認めたというのであります。かかる不当なる発表が大邦丸事件が起つたばかりのときに行われたことは甚だ遺憾の次第であります。それで特に法務委員会とも連合の上で、この問題について質疑をしたいという次第であります。御質疑のあるかたは順次に御発言を願います。
○伊達源一郎君 外務政務次官にお尋ねいたしますが、この竹島問題は平和会議のときに、もう日本の領土であるということの確実なことが決定しておるはずであります。私はその当時西村条約局長に尋ねたのですが、もうそれは確実にきまつておるから問題はないのだということでありましたが、先月の二十八日の新聞には、韓国側が韓国の領土であるということを声明し、米国がそれを承認しておるということでありますが、この真相と、この問題についての外務省の見解とを政務次官から御説明を願いたい。
○政府委員(中村幸八君) 二月二十七日におきまして、韓国政府の国防部が竹島の韓国領有につきまして米国の確認を得た旨の声明を発表したとの報道が伝えられておるのであります。併し外務省といたしましては、この問題につきましては何ら正式にいずれの方面からも通知も通告も受けておりません。お話のように、竹島につきましては古くから日本の領有であるということにつきましては何人も疑いなかつたところであります。今日といえども、日本の領有であるという確信を持つておるのであります。それにつきまして韓国政府の声明なるものが発表されましたにつきまして、一応外務省としての見解、又従来韓国政府と日本国政府との間にいろいろこの竹島の帰属の問題につきまして交渉せられた面もありまするので、それらの経緯につきまして御説明申上げたいと存じます。
竹島の概況、或いは日本領有の経緯と経営の大要につきましては、只今お配りいたしました「日本海の竹島について」というパンフレツトによりまして御覧を頂きたいと思うのでありまするが、確かに日本の領土であるということについては、何ら疑いを容れる余地がないのであります。竹島の帰属が問題になりましたのは、昨年の一月十八日に、李承晩大統領が海洋主権の宣言を行なつて以来のことであります。この李承晩大統領の宣言は、韓国の魚族保護の水域を確定するに当りまして、竹島をもその範囲にした、即ちいわゆる李承晩ラインの中に一方的に取込んでしまつたのであります。そこで我がほうといたしましては、この李承晩大統領の海洋主権宣言に対しまして、一月の二十八日付を以ちまして韓国代表部宛に口上書を以て抗議をしたのでありまするが、その際同時に竹島の問題につきましても、この宣言において、韓国は竹島として知られている、或いは又リアンクール・ロツクスとして知られておるところの日本海の小島に領土権を主張しておるように見えるが、日本国政府は当然日本の領域である竹島に関する韓国のかような僣称又は要求を絶対に認めるものではない、こういうことを特に主張しておいたのであります。ところが韓国側はこの李承晩ラインに関する我がほうの抗議に対しまして、二月十二日付口上書を以て反駁して参つたのでありまして、その際同時に竹島についてもその懸隔を深くいたしております。それによりますと、韓国政府は数世紀の間朝鮮で独島として知られているリアンクール・ロツクスの領有に関し、ここで仔細に亘つて議論を行おうとは思わないが、一九四六年一月二十九日付のスキヤツピン第六百七十七号によりまして、スキヤツプが同島を日本の領有から明白に排除したこと、それから更に同島はマツカーサー・ラインの韓国寄りに置かれておること、即ちこれらの二つの事実は同島に対する韓国の要求に同意し、これを確認するものであつて、何ら議論の余地のないものであることを日本政府に想起せしめたい、こう言つておるのであります。我がほうといたしましては、当然これに対し直ちに反駁することができ、又その必要があつたのでありまするが、あたかも日韓会談の進行中であつたので、それがための適当な時期を待つことといたしておつたのであります。然るに四月末に至りまして日韓会談は停頓となり、一方講和条約の発効も間近に迫りましたので、それ以前に本件に関する我がほうの主張を韓国側に表明して置くほうが適当と認められましたので、四月の二十五日付韓国代表部宛に口上書を以ておおむね次の通りのことを申送つたのであります。
即ち竹島は従来より日本領であつて、韓国側の主張は次に述べる理由によつてこの事実に何らの変更を加えるものでない。
第一に竹島は現に島根県穏地郡五箇村の一部である。
第二にスキヤツピン第六百七十七号は日本政府が竹島に対して政治上、行政上の権限の行使又は行使を企図することの停止を命じたにとどまつておりまして、竹島を日本政府の領域から排除したものではない。現にその覚書自体におきましても、この覚書による日本の定義が、ポツダム宣言の第八項に述べられておる諸小島の最終的決定に関する連合国の政策と解してはならない旨を断つておるのであります。
第三にマツカーサー・ラインを規定した覚書自体においても、マツカーサー・ラインは国家統治権、国際的境界、又は漁業権の最終的決定に関する連合国の政策を表明するものではない旨が断られておるから、竹島がマツカーサー・ラインの韓国寄りに置かれておることを論拠とする韓国側の主張は根拠とならない。且つ又マツカーサー・ラインはすでに撤廃せられておるので、この種の論議は全く必要がない。
第四に日本国政府の調査によれば、竹島が数世紀の間独島として韓国の領有にあつたという事実はない。
こういうことを主張いたしたのであります。この我がほうの主張に対しまして韓国側は、その後何ら正式の意思表示をして参つておらないのでありまして、爾来今日に至つた次第であります。然るに本年二月二十七日韓国政府国防部が竹島の韓国領有につきまして、米国の確認を得た旨の声明を発表したとの報道が伝えられたのであります。伝えられるところによりますると、右国防部の発表は、独島の帰属について、韓国政府と国連軍司令官との意見が韓国領土の一部であるということの点について一致を見、ウエンライト米極東空軍司令官から、この旨正式通知が届けられ、同時に米空軍による爆撃演習が中断せられた、こういうような趣旨のものであつたようであります。
果して米国側がさようなことを韓国政府に通知を行なつたものかどうかということは明らかでありませんが、察するに何らかの方法によりまして、米軍の爆撃演習中止の措置を知つた韓国側が、一方的にそれを歪曲して自己に有利な宣伝材料として使用したものではないかと考えられるのであります。この竹島は、日米行政協定に基いて合同委員会の議を経まして、海上演習場として昨年の七月二十六日の施設区域協定のリストに掲げられたものでありまして、米軍においてこれを演習場のリストから削除するということになれば、当然合同委員会の議を経なければならん性質のものであります。我がほうにおきまして爆撃演習が中止されておるということは、これは承知いたしておりまするが、演習場のリストから削除するということは、未だ合同委員会には上つておらないのであります。そこでこの際はつきりさしておかなければならない点は、竹島は本来日本の領有に属するものであるからこそ、日米合同委員会の議を経て、初めて米軍の使用する海軍演習場のリストに入れられたということであります。従つて韓国側の言うがごとく、韓国政府が米極東軍により何らかの通知を得たのが仮に事実であつたといたしましても、それた爆撃演習の中止に関するものであつて、竹島の帰属とは何らの関係がないものであると考えます。
以上一応本件に関する従来の沿革又交渉の経過、最近における新聞の声明の内容、更にこれに対する我がほうの見解につきまして御説明申上げた次第であります。
○委員長(徳川頼貞君) 外務大臣が只今見えられました。外務大臣はほどなく又予算のほうから請求がございまして、予算委員会のほうへ出席されるはずでありまするから、その間において外務大臣に御質疑のある方はどうかお願いいたします。
○伊達源一郎君 只今の経緯は、これは外務次官から詳しく承わつたのでありますが、外務大臣が見えましたから、外務大臣に質問をいたしたいと思います。この竹島問題で、韓国がああいう勝手な声明をしたのに対して、外務省はどういう措置をとつておられるか、外務大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 今政務次官から御説明のように、竹島の帰属というものは、我々は明白なことであつて、疑いを挾む余地は殆んどないと思つております。従つていろいろ声明をしても、これは結局雲散霧消するものであろうと思いますので、徒らに言葉尻を掴えて議論をすることは、半分ぐらい向うに権利があるような印象を与えても却つていかんとも思うので、何もする必要はないという考えでおります。
○伊達源一郎君 一方がそういう声明を出しておるのに、何もせずに放つておいて、その声明が有効になるような心配はないのですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 何もしないのなら別でありますが、今までに公文書その他で日本の態度を明らかにしておるのであります。これ以上明らかにする方法はないのであります。従つて例えば正式に向うから申出て来るというような場合には、これは当然やらなければならんのでありますが、それでないいろいろのアドヴアルン的な声明に対して一々取合つていることは、却つておかしいのじやないかと今のところは思つておりますが、これが又何か烈しくなればやらなければならんでありましよう。今のところはその必要はないと考えております。
○伊達源一郎君 平和条約締結のときに西村条約局長から、竹島問題は、はつきり日本の領土ということにきまつておるから心配はないのだと言われた。その根拠は今政務次官の説明せられたような程度ですか、法律的に、条約的にはつきりしたことがあるのかどうか伺いたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) 平和条約は、日本が権利権限その他を放棄すべき地域は定められております。それ以外の旧日本領土は、当然日本に帰属すべきものである。一々列挙はいたしておりませんけれども、これが当然の解釈だと思います。
○團伊能君 李承晩ラインは、韓国側の一方的な宣言でございまして、日本といたしては、これを認めていない状態はよく我々共承知いたしておりますけれども、李承晩ラインの中側における漁業は、これに制限を加え、旦つ日本の漁船がここに入ることを許さないということを声明いたしておりますし、現に拿捕せられました日本の漁船について、韓国側の言い分といたしては、李承晩ラインの中に侵入したことによつて拿捕したというようなことを声明しておりまして、李承晩ラインというものは一方的宣言でございますが、そのうちにおきまして、韓国はすでに一つの行動を実施しておるのであります。そういたしまして、この島根県に属しておりました古い名で言うリアンクール・ロツクス、竹島が日本の領有であり、これが李承晩ラインの中にあり、而も日本の漁船の自由なる航行をも妨害するという行為が現実にありまするときは、これは日本の主権のある領土に対して一つの制約を加えて来るのでありまして、日本の領土権或いは主権の侵害であるということを考えられます。その点で只今外務大臣はただ一つの声明であるから、こういう場当り的の声明であるから、これをとり上げないと言われましたが、それも一理ありますけれども、この日本の領土の主権を制約するというような韓国政府の行為となりますと、これは日本国といたして放置できない重大な問題ではないかと考えますが、その点におきまして外務大臣のお考えをもう一度承わりたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 竹島に行く船が妨害されたということは聞いておりませんが、そういうことがあれば勿論それに対する措置をいたします。
○團伊能君 なお、一つこういう事件が起りますと、我が国の周囲を取巻いておる島嶼の帰属につきまして、外務大臣が言われるように、日本の領土から離れたところの領土の区域は、明らかに残るところは日本の領土として認められたわけでありますけれども、更に正確な日本の領土の範囲を国際的にレジスターするというようなことは、従来国際慣行としてありますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 私の知る限りではそういうことはないと思いますが、ただつまり何と申しますか、畳で言えば、真中のほうは問題なくて、縁のほうになると問題が仮にあるといたします。そういう場合には、例えばフランスと日本との間に西沙島の領有というような議論もあります。どつちの領有であるか、或いは南極についてどつちの領有であるか、それは非常に端のほうであつて、そういう場合もありますが、一般に日本の領土はこれこれであるということでレジスターするということはないと思います。又実際上はそこに行政権が及んでいるわけでありますから、問題はないわけであります。
○團伊能君 然らばこの島の領有に関して国際的に最後的な判定をする場合に、いろいろな曲折がございましようか、若しもこれがどこかに提訴いたしまして明瞭に島の帰属を決定するというような何か方法がありますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは平和条約の解釈という問題になれば、条約の規定によつて或いは国際司法裁判所というようなことが考えられますが、これについては解釈ということではないと思います。もうそれにも当らない問題だと考えます。
○團伊能君 然らば、若しも韓国政府が実力的にこの島に行く漁夫に対して危害を加えたり、その島の領有を実力的に主張するとか、或いはこの島を領有し、これを守つて日本人に行かしめないというような事実が起つたといたしましたときには、どういう解決をいたしますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは実際上の問題でありますから、能う限りの善処をいたすようにいたしたいと思います。例えば歯舞、色丹も、日本は領土だと主張しておりますが、今これに武力を用いるとか、その他の力を用いるというところまでは考えておりませんが、これとそれとはまるで性質が違いますけれども、場合によつては、問題を平和的に解決するためには多少の時日を要することはあると思います。いきなり戦力武力で以て喧嘩をするというようなことにはすぐは行かないだろうと思いますが、方法いろいろあるだろうと思います。
<略>
○曾祢益君 私遅れて来て、外務次官の御説明をずつと聞いて、なかつたので、或いはとんちんかんなことを伺うかも知れませんが、今の伊達委員、或いは團委員と外務大臣の質疑応答を伺つておりますると、政府のほうでは、平和条約によつて日本が主権を放棄した地域というのは、これはきまつておる。そこには入つていないから、従つて竹島は日本の主権であると、そればかりではないでしよう。勿論その前にも日本が領有した事実があるということを言つておられますが、最近の日本の領土の変更に関する一番大きな国際条約は、言うまでもなく平和条約です。この平和条約には、日本から主権を放棄する地域には入つておらない、だから日本の領土だという主張が一つある。いま一つは、行政協定です。これに関連する合同委員会の作りましたアメリカ軍の演習区域の中に入つておる。従つて、これ又積極的に日本の領土であることが証明される。この二点が積極的な法律的な論拠になつておるのではないかと思うのでありますが、この点については、これはあらかじめお断りしておくべきことだと思うけれども、この島が日本の主権の下にあることについては一点の疑いも持つていないのですが、ただ、今の説明ぶりでいいのかどうかという法律論があるのじやないかと思う。殊に第二に挙げられたいわゆるアメリカの演習地として使用されておる、こういうような理由を挙げることは却つて論拠を弱めるのじやないか。例えば何らかの都合で演習地から落してしまうと、逆に韓国側の主張に応援するような論拠をこちらから与えたことになる危険がある。そういう論拠をお使いになることは不適当ではないか、これが第一点として伺いたい点です。
第二点としては平和条約の解釈として成るほど竹島については、日本の主権から離れる地域、或いは沖縄、小笠原等の特殊な主権、眠つている主権があると言われておる地域とは別でありましようが、併し一方から見るならば、独立する朝鮮という版図にこれが必らず入つていないということが今挙げられた論拠からは積極的な証明はない。それから第二には日本と韓国との間の条約ができない間は、平和条約の条項が少くとも韓国側を積極的に拘束するという理由は、韓国側はそういうものを認めないという主張は一応言えるかも知れない。そうなつて来ると、今までの御説明、それだけだつたと仮定するならば、それだけでは足りない。もつといわゆる独立する朝鮮側にないのだということと、日本の平和条約から見て日本の領土主権を放棄して、いない、この両方から証明して行くほうが更に論拠は強いのではないか、かように考えるのですが、根本はもともとこれは日韓の条約ができておらないことから起つていることなんですが、その速かなる日韓条約の締結に対して政府の施策が今まで遅れておる。いろいろな関係があるにしても、そこが結局根本的な欠陥だと思います。まあその政治論は別としても、今の平和条約の解釈、朝鮮独立問題との関連において、政府のもう少しはつきりした見解をお聞きしたい。
○政府委員(下田武三君) お答えいたします。先ほど外務大臣も言われましたが、平和条約との関係をもう少しはつきり申上げたいと思いますが、平和条約の第二条は朝鮮に関する領土を規定しておりまするが、これがほかの条項ですと、澎湖諸島、千島列島、新南群島、西沙群島、あいまいな言葉を使つておりますが、朝鮮に関しては何が朝鮮かということをはつきり書いております。「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮に対する……。」ですから朝鮮プロパーとその三つの島を限定的に挙げております点は、ますますこれは日本の論拠を強める規定の仕方ではないかと思います。
もう一つ行政協定の点について御意見御尤もでありますが、行政協定の第二条に施設及び区域の使用を許す規定がございますが、この竹島を演習場に指定いたしましたのは、この二条の区域に該当するわけでありますが、ここで日本国の施設とか日本国の区域とは書いてございませんが、日米間の条約で区域をとり上げるなら、これは日本の区域外にあり得ないわけでございますので、行政協定の第二条に基きまして合同委員会を通じて貸した区域ということは、これはもう明かに日本の土地である、領土であることを示す有力な法律的な根拠になると思います。それからなお向うの都合で区域から解除するということもある得るかも知れませんが、正式には再び若し削除するならば合同委員会にアメリカ側から持出しまして、あの竹島は演習場として使用する必要がなくなつたからということで、日米合同委員会に提起しまして、日米合意の上で施設のリストから削除する、そういう措置をとることになると思います。そういう措置をとるということ、これは又竹島が日本に領有する島であるということを明確に法律的に根拠ずけることになると思います。御指摘の二点につきまして我がほうの立場は法律的には極めて明確であると存じます。
○曾祢益君 どうも行政協定の施設に関する御説明は、私は必ずしも非常に強い論拠でなくて、却つて運用される危険を依然として感じるのですが、平和条約の点は確かに一つの論拠だと思いますが、済州島とか、鬱陵島とか、巨文島、これを含むという規定の仕方だけでは、余り明確じやないように思うのですが、その点は大丈夫なのですか。つまりほかにもいろいろな小島があると思うのですね、実際問題として。これを地図か何かではつきり海域の地図でも作つて緯度や経度から計つて、島の帰属をきめるような取扱をしていない場合には、例示的な「島を含む」ということについては……、私は重ねて申上げますが、竹島の領有に関する何らの疑を持つているわけじやない。だが法律的な説明ぶりがそれで完備しているのかどうか。この問題について伺つているわけなんです。今の程度だけでは必らずしも論議の余地のないほど明確だというふうには、この平和条約に論拠を置いた議論だけでは、私はいけないのではないかという危惧の念を持つたから重ねて伺つているわけなんです。殊に、再びあの行政協定のほうに関連しますが、これは何ら韓国に対する主張すべき積極的な根拠になりません、これは……。その点を伺つている。
○政府委員(下田武三君) 平和条約の第二条の「含む」というところでありますが、これはそう言いませんと、朝鮮プロパーだけになるといけませんから、それで朝鮮プロパーだけではないのだと言つて、念のためにこの三つの、念のためと申しますか、はつきりこの三つの島をこれは公海の真中に点在しておる島でございますから、諸島とか群島とかいう概念にも含まれないぽつんとある島を三つ拾つて、そうして朝鮮に含めた、そういうように解釈されるのであります。併しおおせのように幾多の条約の先例のように条約の附則に地図を付けてちやんと明確にするというやり方は、確に最も明確な規定の仕方だと思います。けれども、これは将来韓国との間に基本条約でもできましたときに、一つの非常に有効な方法だろうと存じます。併しながら平和条約では、ほかの領域の規定の仕方と不均衡に韓国の関係だけを詳細に規定する或いは地図を付けるというわけにはいかないので、全体との調和の見地から簡単ではございますが、私どもの見解によりますと、極めて明確な規定の仕方、韓国との領土の関係についていたしておるように存じます。行政協定との関係につきましては、曾祢さんは、それは根拠に援用し得ないとおつしやるのでございますが、アメリカが若し竹島を韓国領土だと見れば、韓国との間の取きめによつて、韓国政府の同意を得て、施設を使用さしてもらうという立場をとるのでありますが、それをしないで日米行政協定の規定に従つて日米合同委員会にかけて貸してもらうという措置をとつたことは、日米間の問題ではありまするが、これ又極めて明白な事実だろうと思います。
○團伊能君 曾祢君の御質問に関連してちよつと伺いたいと思います。私は曾祢君の行政協定関係の論拠は、却つてこの領有に関する問題を侵すような形で弱くなると言われる御思想は全く意見一致いたしますので、若しもそういたしますと、先ほど韓国の発表にありました、真偽は知りませんが、ウエンライトその他の通告というものも同じような価値を持つて来るような形になりはしないかと思います。それでもともと行政協定或いはこの今の軍司令官の発表は、領土その他の問題を解決すべき正確な基礎を作るものではなく、作戦上その他の便宜上から出ておる問題でございまして、これらの米国軍なるものが領土その他、外交的な適格性を必ずしも認めての上に、且つ専門的な知識の上に立つておるものではないと思いますので、これは私も曾祢君と同様に余り論拠にならないと思いますが、ここに一つ伺いたいことは、韓国が従来これは韓国の領土でありと主張していたといたしますと、この講和条約で日本の施政権が届かなくなる、切り離されて行く土地というものが、日本の国土を規定するということについてどういう関係になりますか。御承知の通りこれは日本の施政権の中にありましたのは無人の島嶼でございまして、考え方によつては拡張すればここに人は住んでおりませんのでそういう主張も一応成立つのじやないかと思いますが、そういう場合、もともと日本の領土でないから日本の領土から離れるという規定の中にないという主張をされた場合に、非常に問題が不明確になつて来るんじやないかと思います。その点を一つ伺いたいと思います。
○政府委員(中村幸八君) 先ほど御説明申上げましたように、竹島は島根県の穏地郡五箇村の一部でありまして、これは古くから日本の領土であるということははつきりとしております。朝鮮総督府の管理区域にあつたわけではないのでありまして、島根県の穏地郡の五箇村の一部であつたわけであります。その点は至極明瞭じやないかと思います。
○團伊能君 なお念のために伺いますが、朝鮮の領土に巨文島、済州島、鬱陵島を規定しておると言われますが、この竹島は鬱陵島の南にある島嶼でございまして、これはこの済州島やほかの二つの島の規定は勿論、周辺の岩礁その他を含んでおるものだと思いますので、この竹島を鬱陵島の附属の岩礁というような工合に解釈される虞れはありませんでしようかどうか。
○政府委員(中村幸八君) 鬱陵島とこの竹島とは余りに距離が隔つておりますので、その附属の島という考え方は常識からいつても容認できない問題だと考えます。
<略>
○平林太一君 今の問題ですが、韓国側領有だと称しておるものを強調し、裏付けているものに現在ウエンライト司令官があるが、いずれにしても米国政府と考えてよろしいか。それからこういう了承を得たというのですが、先刻外務大臣の説明、又今政府からのこれに対する答弁を伺つておる中にも。それならばやはりこの当然の措置として外務省は米国政府に対して先ずその真偽を確かめるということを当然なさなくちやならない、その真偽を確かめて事実だということであれば、私はどういう根拠で以てそういう我が方の今まで外務省説明の通り極めて明白な我が領土をそのようなことをするか。まさにこれはいわゆる盗取である、領土をかすめ取る、或いは横奪するということにこれは相成るわけであるが、その経過はどういうふうになつておるか、お答えを願いたい。
○政府委員(中村幸八君) 韓国国防部の発表によりますと、只今のお話のようにウエンライト司令官からこの旨の正式の通知があつたということを、こういうことを伝えておりますので、我が方といたしましては、非公式ではありましたが、昨日早速アメリカ大使館に参りまして、事実や否や、真偽を確かめたのであります。アメリカ大使館におきましても只今のところそういうことは承知しておらない、但し爆撃の演習を中止しているということは事実である。こういうような話がありました。更に一層事実を確かめるように依頼いたしているのであります。その調査の報告を待ちまして更にとるべき手段があればとろうと考えております。
○平林太一君 只今外務次官から昨日そういうことを米大使館に交渉いたしたいということでありますが、甚だ行動が怠慢であるということをこの際強く述べたいと思います。すでに昨日大使館に行かれて交渉したというようなことは、我が方に対して何か弱味があり、或いは何かそういう韓国側の強い態度に対しまして非常に退嬰的であるということが、こういう問題は更に更に問題を複雑化するということになるのでありまして、今後これは過ぎたことはいたしかたがないのでありますが、外交の機微というものは間髪を入れずして処理しなければ、非常な迷惑をこうむり主客顛倒することが考えられるのでありますから、この点十分今後の問題に対して厳重に外務省に対しまして私はこの際戒告をいたしておきたいと思います。非常にこれは怠慢であり失態であるということを申述べたいと思います。それに対しまして何か御答弁ありますか。
○政府委員(中村幸八君) 私昨日大使館に参つたということを先ほど申しましたが、これは事実が多少違つておりまして、ずつと以前に照会をいたしたのでありまするが、昨日大使館に参りましてそういう返事をもらつたわけであります。なお只今のお話の外交は間髪を入れず機敏に折衝すべきであるということは至極御尤もなお説でありまして、そういう方針で我々はやつておりまするが、ただこの問題につきましては、先ほど大臣が申されましたごとく、余りに明瞭過ぎる問題であつてこれを格別に取立てて論議するということは却つてこちらに弱味があるのじやないかというようにもとられる虞れがありましたので、わざと今日まで黙認し知らん顔をしておつたようなわけでありまして、決して怠慢でもなく、我々は考えるところがあつて別段抗議もせず声明もせず今日に至つたような次第でございます。
○平林太一君 昨日でなくて遡つて遥かな時代にそういうことをいたしたということでありますから、私から申上げたことはそれで肯かれることでありましようが、十分申上げておきます。それでこの問題は何か外務大臣がことさらそういうことをいたすことは、当然のことであるので、却つて反抗がましくなるのだということでありますが、これは四囲の情勢で韓国側に対してはあるのです。併し米国側に対してはそういうことであつてはならない。韓国に対して事態がそういう極めて明瞭なことであるから戦争中なのでやつたのであるということでありますからいいのでありますが、併し米国に対しましては、米国自体が我が領土に対して韓国政府とそういうようなことをいたしたことは、ウエンライト司令官がそういう発表をいたしてあるのであるから、これは事実としてよろしいのでありますので、当然の処置を米国に対して厳重にこの際することは極めて必要だと思います。現に李承晩ラインに対しましても更にそういうことでなかつたということを、我々は米国の日本に対する信というものを深く信じてさようなことがないと、こう善意に解釈いたしていたのでありますが、併し今回の問題のようなことが発生してみますと、やはり李承晩ラインの裏面に米国が何か暗中摸索しているのだということを事実の上にこれは立証するものであります。そうでありますから、今外務次官の言われる見解と私は違います。米国に対しましては今御言明になつたような態度でなくてこの際厳重な交渉をして、そうして若しそういうことをするならば事前に我が方に対しては外務省に対しましてそれぞれの処置なり手続なり折衝をして、どうしても軍事上必要であつて困るというならば、話はそのときは別であります。さようなことを必要であるというために、全然我が方に何らの話もなく、いわゆる朝鮮との間に世俗で申せば闇取引である、闇取引と申しましても自己のものではない、よそのものを闇取引するというので、甚だ許すべからざることであると思います。こういうことに対して私は非常な強硬な態度を以て米国政府に向つて外務省は臨むべきところの態度をこの際表明せられることは極めて大切だと思いますが、どういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(中村幸八君) 御意見御尤もと存じます。でありまするのでアメリカ大使館側に事実の調査を依願いたしておりまして、その調査の結果によつてウエンライト司令官が実際にそういう正式通知を韓国政府になすといたしますれば、我が方といたしましては厳重なる抗議をいたす考えであります。
○平林太一君 大体そこで外務次官の御答弁で私も了承をいたしましたが、この際附帯して申上げておきたいことは、李承晩ラインに対しまする今あのような竹島という問題が出て来たのでありますが、これは重大である。要するにこういう問題も李承晩ラインというものが一応先方の優越感といいますか、そういうようなものがこのようなことを声明せしめるのでありますが、それですから李承晩ラインに対する米国と韓国との関係に対する信義の確立というものは、この際極めてこれはあいまいになつております。それですべての問題は、米国と日本の問題は米国と、日韓間の条約に対することは日韓の条約でやる、かような問題につきましていわゆるこれはあいまいもこにいたしまして、そうして何か日韓条約のために大事なことだということは、決して私は日韓条約の相互の友好提携の上に、条約締結のいわゆる軌道に乗るべきものではないと思います。でありますから、この点一応申上げておきたいのでありますが、これは李承晩ラインに対します私の只今申上げましたことに対しまして、次官はどのような御見解を持つておられますか、これは私は非常に弱腰では困ると思うのでありますから、一応承りたいと思います。
○政府委員(中村幸八君) 李承晩ラインに対しましては、外務省といたしましては絶対に容認ができんということは、再々申述べているところでありまして、又アメリカ側といたしましても、国連側といたしましても、李承晩ラインというものとクラーク・ラインというものは全然関係がないということをはつきり申しております。ただ韓国側では国防水域と李承晩ラインとを結び付けて、そうして韓国側に有利に事を導こうというような意図があるやに推察されまするが、国連軍として或いはアメリカとしてはさような考えは全然ないように承つております。
○杉原荒太君 さつきから政務次官の言われることを聞いておりますと、竹島が日本の領有だということ、それについては私も疑問を持たないけれども、それを主張して行く立論の仕方が非常に薄弱ですよ。もう少しよく研究されないというと、これは今まで日本のどこそこの領域にあつたということなどじやなく、もつと本当に国際的に主張し得るような立論の仕方をもう少し研究されたほうがいいと思います。条約局長その辺のところまだもう少し私は精密に研究される必要があると思います。
それから念のために一つ聞いておきたいと思うのですが、日本側でも韓国の領有たることを争わない、まあ認めている島で、そうして而も韓国の領海外にある島がどれくらいあるか。全然存在していないのか、存在しているのか。その辺のところを調べておられるのか。
○政府委員(下田武三君) 私の主管する条約局では調査はやつてありませんが。
○杉原荒太君 それを調べておかんと、あなたがさつき言われたこれこれの島を含むという条項を援用しても論拠薄弱になつてくる。
○政府委員(下田武三君) 併し韓国の極く近いところの岩礁とか何とか……
○杉原荒太君 それだから私が言つているのは領海外で……
○政府委員(下田武三君) そういうものは地図を一見したところはございません。更に綿密に海洋調査式のことをやれば……
○杉原荒太君 それは竹島以外には別にないのですか。
○政府委員(下田武三君) 現在までの調査はないと承知しております。我々は曾つて疑いを持つたことがない……
○杉原荒太君 私の言うのはですよ。つまり領海外の島で、そして而も今韓国の領土と認められている島が、さつき挙げられた平和条約に列挙してある島以外にもあるかないかということ。
○政府委員(下田武三君) 条約に取立てて書くような島はございません。それから竹島はここに書いてあります鬱陵島よりも更に日本に近い所にあるのでございますから、若し韓国寄りにあるとか、或いは鬱陵島と韓国と等距離ぐらいにあるのでしたら疑いはございますけれども、沖ノ島と鬱陵島との中間にあるわけでございますから。
○杉原荒太君 私は今議論を聞いているのじやなくて、そういう事実があるかどうかということを聞いている。それがあなたがたが論拠を立論するからには大事なんです。僕はあなたがたが立論をもつと正確にする必要があると思うから聞いているのです。
○政府委員(中村幸八君) お説の点は十分調査いたしたいと思います。
<略>
○中山福藏君 この際政府に確かめておきたいことがあるのですが、それは日米合同委員会の爆撃演習地として一応竹島が入つておつたのを、この頃抜かれておるというのはどういうわけですか。向うが勝手に抜いたというわけですか、そこを一つ。
○政府委員(中村幸八君) 日米合同委員会によつて選定いたしました施設地域協定の中から除かれてほおりません。ただ実際爆撃演習場として使用しなくなつたということだけだろうと思います。
○中山福藏君 それはウエンライト米空軍司令官の日本領でないということを認識してそういう挙に出でたのではないかという疑いが一応持たれるのですが、それはどうですか。
○政府委員(中村幸八君) 我方はそういうふうには考えておりません。
○中山福藏君 そこで一つお伺いしておきたいと思うのですが、これは韓国側の言うことも日本側の言うことも一通り筋を立てて手がけて来ておるものと思う。私どもは日本人として日本の領有であるということを固く信じておるのですが、併し結局両方から水をかけ合つておるというのが実情であります。然らばこの水をかけ合つておることを一つの解決するという姿に持つて行くにはどういう手段方法を講ぜられるつもりか、それを一つ承わりたい。
○政府委員(中村幸八君) その点は先ほども外務大臣が申されましたごとく、別段今ここに取立ててこの問題を協議すべき性質のものではない、明々白々、我が日本の領土である、こういう観点に立つておるのでございます。今後なおこの問題が一層紛糾するような虞れがありますれば、何らか適当の方法によりましてはつきりと我が方の主張を声明するなり、或いはアメリカ大使館を通じて、或いは又直接に韓国政府に対して抗議を申込み、適宜そのときに応じた方法をとりたいと思います。
○中山福藏君 これ以上紛糾して来れば適当な処置をとるとおつしやるのですが、大邦丸事件以来一をとつて二をとるというような金内務長官とか或いは李承晩声明というものは相当日本というものを蔑視してかかつておると私どもは考えておる。これはいわゆる蔑視ということはすでに日本何するものぞという態度を示しておる、これはやはり外交的の一つの紛糾です。適当な処置をとるということは現在とらなければならん、それでこれ以上紛糾したら適当な処置をとるということは、これは私は当局としてはそういう何と申しますか、先ほどの平林氏の言葉を借りて言えば、一種の怠慢的な私は態度だと思う。それよりも現に私どもこれを紛糾と見ておるのですが、それを解決する手段、方法、計画というものは外務省にはないのですか、それを一つ。
○政府委員(中村幸八君) まだ韓国政府の声明なるものが発表されただけでありまして、その内容の真偽のほども明瞭でありませんし、目下事実を調査いたしております。その程度ではまだ紛糾とは言えないのではないかと考えております。この上更に話がもつれて来るような場合におきましては必ず何らかの強硬な方法をとるというように進みたいと考えております。
○中山福藏君 それも大邦丸事件といい、或いは今度の竹島問題といい、これを共に日韓会談のときに持込まれるつもりでありますか、或いは日韓会談と別個にこれを処理するという意向があるのですか。向うのほうからいろいろなことを言つて来なければこれに対応する手を打たんというようにも聞こえるのですが、その点はどうでしようか。
○政府委員(中村幸八君) 大邦丸事件につきましても日韓会談とは切り離して別個にこれはこれとして解決する、こういう方針で進んでおります。この点につきましては韓国との間のもつれが生じたそもそもが目撃談そのものではないのでありまして、李承晩ラインの一方的海洋主権宣言についての我が方の抗議から始まつた問題であります。従つてこの問題は日韓会談とは別個に取扱いたいと考えております。
○中山福藏君 その別個の方法と、並びにその着手せられる時期はいつ頃ですか。
○政府委員(中村幸八君) アメリカ大使館に事実の調査を依頼いたしております。これを督促いたしまして、その結果が明瞭になりました上でとくと考えたいと思います。
○中山福藏君 最後に一つお伺いしておきますが、先月の二十八日の午後一時半に伊関国際協力局長が大阪に来られて大阪クラブで講演をしておられるのですね。いわゆるアメリカの軍需品発註に関する註文というものが相当増大するだろうという前置きをして約二時間半に互つて演説された。そのうち地域防衛協定というもの或いは日米防衛協定というものをする時期が来るといつた、両当局者の間にこれが進行中であるという演説をされた。三、四日前ですね。そこでその地域防衛協定というようなことが、これは日米合同委員会の理事ですか、委員ですかしておられる伊関さんの言葉でありますから、私はこれはまあうそだとは思いませんが、そういうときにこの地域防衛協定というのは竹島なんか入ることになつておるのですかどうですか。これは外務省として大阪に派遣された伊関さんの言葉ですから、一応一つ念を押しておきます。
○政府委員(中村幸八君) 伊関局長が大阪でどういうことを言われたか存じませんが、恐らくそれは誤伝ではないかと考えております。なお地域防衛協定なるものは総理或いは大臣からも再々申上げておりまするごとく、今日日本は軍備を持つておらない、従つて地域防衛協定というようなことは考えておらない、こういうことを述べております。又なおこの竹島問題が地域防衛協定にどういう関係があるかということは、これはまあ地域防衛協定を考えておらないという点からいたしましてお答えすべき筋でないと思います。なおこれは日本の領土であるという点から言えば、仮に若しそういうような協定を結ぶとすれば、日本の領土の一部として防衛の対象にはなると思います。
○中山福藏君 それは誤伝であるとか何とか絶対に私はあなたから言われたくない、これはもう事実です。厳然たる事実です。伊関局長はこう言つたのですよ。今アメリカから軍備のために要求されておる兵数は三十二万五千人だ、併し本年度は四万しか増員ができない、こう言うのです。ですから誤伝とか何とか言うには伊関さんが大阪で言われたということをお調べになれば誤伝か真伝かよくわかるのです。ですから私は念を押しておくのです。だから、そういう次第でございますから、私はこの地域防衛協定なんかというようなものができれば或いは我々の心配しておることも解消されるか知りませんが、それができるまで待つておることはできんというような立場から早急にこれは解決すべき問題である。この竹島問題は解決すべき問題であると思つておるから私はこう言うのですが、紛糾した場合に適当な措置をとるなどということは、これは私どもはあなたがいつおやりになるか知りませんが、百年河清を待つような政府の答弁を頂きたくない。だからこれは特に私は念を押して政府の覚悟を促さなければならんと思うのです。今まで日本の外務省というものはいつもこの手で国民をだまして来た。私どもはもうだまされたくない。だからできるだけ速かに私は何らかの措置を講ぜられんことを切にお願いして私の質問を終つておきます。
○伊達源一郎君 ちよつとお尋ねしますが、竹島は李承晩ラインからどのくらい朝鮮から言うと内側にあるのですか。
○政府委員(中村幸八君) 李承晩ラインの殆んど線すれすれのところにございます。正確にまあ距離を申述べることはできませんが、これもなお調査いたしまして御報告いたします。
○伊達源一郎君 李承晩ラインを日本の領土である竹島すれすれに引いたとすると、そこには非常に大きな問題がなければならん。李承晩ラインの声明に反対の申入れをしたときにこの竹島のことについて言及されておるかどうか。
○政府委員(中村幸八君) 李承晩ラインの宣言に対する我が方の抗議の際に、最後に付け加えまして竹島が李承晩ラインの中にあるが、これは我が方としては絶対に容認できないということをはつきりそのとき伝えてあるのであります。
○伊達源一郎君 この李承晩ラインをそのときに韓国の方ではこれを韓国の領土として入れようとするインテンシヨンがあつたのじやないかと思いますが、外務省はどういうふうに解釈されますか。
○政府委員(中村幸八君) その点は韓国側の意図ははつきりいたしませんが、李承晩ラインは魚族保護という見地からこのラインを引いておるのでありまして、直接領土というものとは関係ないのじやないかというようにもとれますが、御説のような考え方も想像できるわけであります。いずれにありやはつきりいたしません。
○團伊能君 竹島問題は一種の岩礁の人のいない島の問題でございますけれども、こういうことが起つて来ると仮定いたしますと、日本国民がその領土として住んでおるところの地域に対して国民といたしまして、一種の大きな不安を抱かせられる問題だと思います。事竹島のみならず、日本は御承知のごとく周辺海をめぐらしておりまして、数多の島がございます。ポツダム宣言その他で書いてある極みて大ざつぱな四大島及びそれに附属する島嶋というようような観念で日本の領土を考えることができない。もつと非常に正確な微細に亘る地域の決定を何らかの方法においてして頂かなければこれは我々として安心できないような印象を持ちます。殊に歯舞群島のごときがこれが果していわゆる条約にございますキユーリル・アイランドであるかどうか、即ち千島であるかどうか。若しも千島でない、北海道附属島嶋であるといたしましたとき、それは国籍は日本にあつて只今ソ連軍の占領下にあるという状態になりますが、ほかのいろいろそういう島嶋もございますが、併し先ずこれに連関して歯舞群島のステータスはどうか。キユーリル・アイランドと申されますのは日本の領土であるかないか、その地域は。日本の現状の姿を簡単に、できたら併せて御説明を伺つておきたいと思います。
○政府委員(下田武三君) 平和条約の規定によりましてそういう不明確な問題は発生しないわけなんでありますけれども、誠に根拠のない韓国のような横紙破りを主張するから問題が起るのであります。現在のところ只今御指摘の歯舞、色丹両島とこの竹島以外に何ら紛争の発生が現実にございませんし、又ありそうな島もないわけでございまするから、その点は御懸念が不要ではないかと存じます。なお先ほどの政務次官の御説明を補足さして頂きますと、この間の国防部の発表のありました直後に私アメリカ大使館員と会いましたのですが、念のため聞きますと、米大使館は一笑に付しておりました。これは余りにも明白な問題であつて取るに足らんという態度であつたのであります。それで米軍の関係者と伝えられておりますのも軍の人間でありますし、韓国の国防部の発表でありまして、両政府の立場を代表する立場にある者が言つたことではないのでございまして、アメリカ自体が一笑に付しているような問題を日本が余りに大きく取上げて行くということは均衝を失しているのではないか。そういう考慮もありまして単に調査を求めて、そうしてその回答を待つておりましたが昨日回答がございました。内容はこれはただ軍で爆撃の演習を停止したというだけの事実の回答でありますので、迫つて米国政府の見解はアメリカ大使館から正式にあることと存じます。
(注)
※伊達源一郎:参議院議員(無所属)
※中村幸八政府委員:外務政務次官
※岡崎勝男国務大臣:外務大臣
※團伊能:参議院議員(自由党1950)
※曾祢益:参議院議員(日本社会党)
※下田武三政府委員:外務省条約局長
※平林太一:参議院議員(無所属 )
※杉原荒太:参議院議員(自由党1950)
※中山福藏:参議院議員(緑風会)
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昭和28年09月17日 第016回国会 衆議院 外務委員会 第30号
○ 田中(稔)委員 外務省の方にお尋ねいたします。竹島の問題につきましては、これが日本の領土であるという主張は、日本側の主張として私ども聞いている、われわれもそうだと思つているのでありますが、一方韓国側は、韓国の領土であると主張しているわけです。その主張が理不尽なものであろうと思いますが、やはり韓国側の主張は一応主張として私ども参考には聞いておきたいと思います。外務省の方ではよくわかつておると思いますから、その点につきまして私どもに御説明を願いたい。なおこの竹島問題は非常に大きな問題として国民の眼に映じておりますが、政府としてはこういう問題が起つたのをむしろ得たりかしこしとして、だから再軍備をしなければなら、ぬ。だから保安隊を増強しなければならぬというような、何か宣伝の具に使われるという底意があるのではないか、新聞あたりも非常に大きくこれを取上げておりますが、私ども社会党左派としてはそういう心配をしておるのであります。私どもは、そういう問題の解決は実力によつて対抗するというより、やはりこれは国際的に公正にして合理的な解決を見るのでなければならぬ、従つてわれわれとしては国連に提訴するとか、国際裁判所に提訴するというようなことで、問題を解決しなければならぬと思います。そういう考えも持つておりますので、やはり日本側の主張はもちろん主張として、また向う側の主張はたといそれが理不尽なものでありましても、一応その説明を聞くということが必要だと思うのであります。条約局長でもけつこうですけれどもできるだけ詳細に御説明を願いたい。
○下田説明員 この前の委員会でも申し上げましたが、実は竹島を韓国の領有なりと主張する根拠は、ちつともわからなかつたのであります。何度も抗議、逆抗議の文書の往復をしておりましたが、わが方は詳細なる歴史的、民族的いろいろな根拠をあげて、日本領である理由を申しておるのに対し、先方はそれを反駁する何らの裏づけがなかつたのであります。そこで先般の委員会でも、たとい竹島の問題が国際法廷に持ち上つても、完全に勝つ自信があるというようなことを申したのでありますが、その後最近になりまして、初めて韓国が竹島――韓国では独島といつておりますが、独島は韓国領なりと信ずるゆえんのものを非常に詳細に申して参りました。しかしこれは外国の文書でありますから、かつてに日本側で発表することは差控えたいと思いますが、ポイントだけ申しますと、日本側が歴史的、民族的にあそこは日本領だというのと同じように韓国も、あそこは韓国領であるという文献等をあげております。その文献の中には日本の文献も入つております。そこで長い歴史の上には鬱陵島に住む韓国人が、漁業等のためにあそこへ行つたということは、あたかも日本国民があそこに行つたことがあるように、その点は事実かもしれません。しかしそれは必ずしもあそこか韓国領であるという根拠にはならないのではないかと思います。もう一つのポイントは、平和条約で何にも言つてないということは、あれが日本領になつたことではない、日本側は、鬱陵島その他の島は韓国に行くことを平和条約で明記されておるからそうなるのであつて、平和条約に明記されてないものは当然日本側にそのまま残るのだという主張であるが、そんなことはない、平和条約に明記をされておるのは、韓国に属する無数の島のうちのごく一部分であるというようなことを言つております。しかしながら日本側といたしましては、ポツダム宣言を受諾いたしましたときに、ポツダム宣言に引用してありますカイロ宣言を受諾いたしたことになるわけであります。つまり日本近辺の諸小島の帰属は連合国側がきめるぞというような連合国側の主張を、日本側は降伏によつてのんだわけであります。そこで帰属の問題については、平和条約によつて明らかになつたわけであります。平和条約の第二章というのはまさに領域の帰属をさしたものでありまして、これはそういう領域条項の当然の解釈といたしまして、領域条項に掲げられた島、つまり特に敗戦国側から剥奪する領域だけを書くのが当然でありまして、日本側といたしましては、平和条約の領域条項に特に書き出さたれ領域以外は、当然日本に残ると心得てしかるべきである、また連合国側の解釈もそうであろうと思います。なるほど韓国の近い所にはたくさんの島がありまして、それは一々平和条約では申さないでありましよう。しかし平和条約に記載されておる鬱陵島よりももつと日本に近い島を韓国のために取上げるなら、まさに連合国はそれを特記したはずであります。日本側に近い島を特記しなかつたゆえんのものは、連合国側の意思は当然日本に残す意思であると解すのが当然であろうと思います。また韓国側のもう一つのポイントは、米軍は竹島に対する射撃を中止する際に、韓国の国防部に通告して来たということを言つております。これも日本が申しておりますように、あれは日本領であるからこそ合同委員会におきましてわざわざ日本側から地域として提供してもらう措置を米軍がとつて、それで演習地として使用した。やめるときに再び合同委員会にかけまして、そうして日本側に、あれはもう区域として必要なくなつたということを申して来ておるわけであります。ただ昔から韓国人も漁業であの近辺に行つたという事実がありますから、念のために利害関係者として韓国にそういういうことを通和することもあつたでありましようが、それは便宜の問題でありまして、領土権が韓国側にあるからという理由で、米軍が韓国側にも通報したと解釈するのは誤りではないかと思います。このように韓国側があげております根拠は、私どもの目から見ますと、これはどうも、成り立ち得ないのではないかと思います。韓国側はあるいは向うの理由を詳細に将来発表するような機会かあるかもしれませんが、日本側からその全貌を発表することは差控えたいと思います。しかし大体おもなるポイントはただいま申し上げたような点でございます。
(注)
※田中(稔)委員:田中稔男衆議院議員(日本社会党(左派))
※下田説明員:下田武三(条約局長)
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昭和28年11月04日 第017回国会 衆議院 外務委員会 第5号
○川上委員 質問の打合せで二十分ということになつておりますので、私はこの打合せその他はかたく守りたいと思いますが、政府の方でもできるだけ簡単にお答えを願いたい。そうしませんと時間が延びます。
第一番の問題は竹島の問題でありますが、この竹島が今日本にとつて重大な問題になつておる。この竹島は占領中の日本の行政区域になつておらなかつたという事実、これはどういうわけで占領中日本の行政区域になつておらなかつたかということを聞かしてもらいたいのです。
○ 下田政府委員 御承知のように占領開始直後でございましたが、日本国政府の行政権の及ぶ範囲を限定いたしまして、その際に大部分の離れた島々に対しては、日本政府の行政権が及ばないことにいたす旨の指令が出ました。但しその指令に明らかに断つておるのでありますが、これは講和の際に日本国の領土として何が残るかということとは、全然関係のないことであるという断りがついた指令が出た次第であります。
○川上委員 それはよくわかつておるのでありますが、竹島のような島、これは昔から日本の領土であつたと主張しておるのですが、これが特に除かれておつた、つまりこれが領土を最終的に決定するのでないとかあるとかいう問題ではないのです。なぜこれが除かれておつたのかということを聞いておるのです。
○下田政府委員 これは連合軍司令部がどういう意図で除きましたか説明はございませんでしたが、大体竹島と同じくらい距離の離れておるところは、そこに日本政府あるいは日本国民が行くことを許すことは占領政策上おもしろくないという見地から、あのくらい距離の離れた島は、竹島に限らず除いた、そういうように考えるのでございます。
○川上委員 そんなことはありません。ほかのところで除かれておるのはことごとく何らかの理由があるのです。これはわれわれが了承してよいかどうかは別としまして、理由はちやんとある。しかし竹島はどういう理由なのですか。あそこのところにわざわざマッカーサー・ラインがあの上を通つておるにもかかわらず、竹島だけはわざわざ除いてある。そうすれ政府はなぜこれはのけておりますかということを聞いたことがありますか、ありませんか。
○下田政府委員 私どもは聞いてことがあるかどうかという点をつまびらかにいたしておりませんので、当時の記録を調べましてから御返答申し上げたいと思います。
○ 川上委員 条約局長が知らぬというのは聞いたことがない証拠なのです。それほど詳しく知つておる人が知らぬから調べてみるなどと言うのはちよつといけないです。これは何も言つておらぬのです。私は問題の出発点はここにあると思う。なぜこんなことが起るか。しかも平和条約を批准するとき国会に出ておる付属地図というものがある。あの付属地団を見ましても竹島はちやんと除外されてある。別のラインが引いてある。マッカーサー・ラインではありません。別の線がちやんとついておるのです。これはほかのところの行政区域をわけた線と同じ線がついておる。この問題について政府は知らぬ顔をしておつた、こういうことが今明らかになつたと思います。ところが去年の七月二十六日にこの竹島は米軍の演習地として日本が提供する区域に一ぺん加わつたことがあると思うのですが、御記憶があるかどうか、ところがこれに対して韓国から抗議が来ているはずなのだ、というのは韓国の人間が死んだとかいうのですが、韓国はあの島へ上つておつたのですから死ぬのはあたりまえです。そこで抗議が来たところがさつそくこれがリストから除かれて、しかもこの除かれたということをアメリカ当局は韓国へ通告しておる。日本の政府はアメリカ当局に聞いてみたら、韓国に通告したのだという返事が来ておる、こういう答弁を政府はしておる。これは何で韓国へ先に通告しなければならないか、また何でリストからのけたのであるか、私たちがこういうことを聞くわけは、アメリカはこの竹島がどつちのものかということがはつきりしておらぬのじやないか、はつきりした文書か何かあるのか、こういう国際紛争の種を残しておいて、やれ実力を使いそうだとか、断固としてやるとかいうことを言うておる。私はこれはややこしい。この点明らかにしたいために私は質問しておる。どういうぐあいでありましようか。
○小瀧政府委員 竹島がどうして除外されたかということは向う側のことでありますからわかりません。しかし演習地に使つておつたことは事実であつて、そうした軍事的の意味から竹島が除かれたかとも思うのでありますが、しかし昨年の七月の二十六日にわが方に対して施設区域に指定方を申し出たということは、明らに日本の領土であるということを認識しておるからの行為であつたと考えてよろしかろうと存じます。また韓国側へ通知したということについて、議会でそういうことを政府委員が言つたように川上委員はおつしやいますけれども、そうでなくして、そういうことを韓国側が申して参りましたから、これはおかしいというので米軍の司令部へ問い合せましたら、そういうことをしたことはないというので、日本側に対してこれはもう使用しないということをその後申して来ておるわけでありまして、その点に川上委員は誤解があるのではないかというようにそんたくいたします。
○川上委員 竹島を演習区域から除いたということを、アメリカの空軍司令官が通告したことは絶対ありません。
○小瀧政府委員 そういうことは日本側にないということを今言つておりますし、日本側へ現にこれを除くということを通達しておるわけでありますから、双方へそういう通達を出そうはずはないのであります。
○川上委員 朝鮮に通告したということを聞いて、日本が聞き合せて、そうして日本側に通告を受けておるのではないですか。向うから来ている回答はそういう回答と違うのじやないですか。
○ 小瀧政府委員 それは韓国側が日本に対する申出に対して、それも一つの理由だというようなことを言うので、調べたのであります。ところがそういう事実がなかつた。しかもそのあと日本に対してこの施設、区域から除外するということを言つて来た。それは明らかに米国側は日本の領土権を認めたからこそ、この協定にいうところの施設、区域から除くということを言つて来たわけであります。
○川上委員 外務当局は日本の領土だから除くと言つているのですが、韓国から抗議があつたから除いておるのです。韓国から抗議があつたことはわかり切つたことなんです。韓国から抗議があつた、そうしたらそれを除いた、こういうことになつておる。だからあなたの言うのはさかさであつて、アメリカは韓国側だと思つておるから除いた、こういう解釈が成り立つわけです。
○小瀧政府委員 それは違うのでありまして、向うは海軍の演習をもうあそこでやらないから、それじや施設、区域から除こうということを言つて来たのであります。
○ 川上委員 私はこういう問題を言い抜けであいまいにしておいてはいかぬと思う。これは私の言つた通りに韓国から抗議があつて、その時分には韓国の漁民が爆撃のために死んで、そこで韓国がアメリカ当局にこれを申し出て、アメリカ空軍司令官は韓国の抗議によつて日本のリストに入つておつたものをのけて、これを韓国に通告しておるのです。こういう点をやはり明らかにしてやらなければいけない。こうして見るというとこれはさつぱりあいまいである。一体アメリカはこれをどう思うておるのか。ここに李承晩はとりついておるのである。これはわが方の領土であることをアメリカ側は認めておるのだということを主張しておるのである。日本は占領区域から除かれていた時分にも、何一つこのことを交渉していない。また韓国から爆撃の抗議があつたから除いたというが、日本の領土なら日本の領土へ韓国がかつてに入つて来て爆撃の被害を受けたところで、これはしかたがない話だ。日本の領土であるのなら、そこで魚をとつておつて演習のために死んだ、これは向うさんがかつてに死んだのであつて、このために抗議なんか成立するはずはない。ところがその抗議によつてこの竹島をリストから除いたということは、アメリカが向うのものだと思つたから除いた、こういう解釈が成り立つわけです。こういう非常に疑問のあるところを残しておいて、そうして断固たる処置をとるか、あるいは場合によつては、武力も使いかねぬような口実を言つておるが、こういうことを言つておると時間がないから私はたくさん論議はしないが、これはまつたくアメリカの、アジア人とアジア人を戦わせるというからくりにすつかりひつかかつておる。同時に日本の中ではこういうことを利用して、再軍備、軍国主義復活熱をあおり立てる材料にしておる。初めからこれはあいまいな形で残つておる。こういう形の平和条約を批准してある。第一にこの平和条約の批准の時分に出したあの地図、あとで政府は急いで取消しておりますけれども、あの地図には、日本領域参考図と書いてある。領域と書いてある。この地図の中にはちやんと竹島はのけてある。ところがこれは参議院の委員会には出ておらぬ。衆議院には出ておるのです。半分しか出てない。それなら何であの日本領域参考図というものを出したり引込めたりしたんです。これは明らかにはつきりしていない。私は、政府はアメリカがはつきりしておらぬぞということを言つた方がほんとうだと思う。だから緒方副総理は労農党の質問に対して、平和条約によつて竹島はわが領土でありますと答えていない。国際法によつてわが領土でありますと答えた。何でこんなことを言う。平和条約でちやんときまつたのなら、そう答えたつていいじやないか。私はこれ以上議論しませんが、この問題は簡単な問題じやない。こういうことをしておいたのは政府の責任じやないか。重大な手落ちなんじやないか。こういう種をまいているじやないか。こうしておいて李承晩に物を与え、そしてアメリカさんはこれを利用して、アジア人とアジア人とを食い合せることをちやんとやつてござる。吉田政府はこれを活用して再軍備の熱をあおり立てておる、こう言われてもしかたのない根をちやんと残しておるじやないか、私はこう思うのです。しかしこれはこれ以上問題にしましても、おそらくここで議論を闘わせるだけになるだろうから、この点を明らかにしなさらなければ、アメリカははつきりしたことを一ぺんも言つたことはありませんよということを一つ言つておきたい。また日本の政府は、平和条約の上でこれは日本の頗土でありますということを、はつきり証明する材料を出さなければいけないのに、今まで出しておりません。このことを私はここにはつきり警告しておきたいと思う。もしもこの委員会を今後、明日あるいは明後日開かれれば、この問題についてはさらに私は材料をもつて政府の考え方を聞きたい。きようは何しろ時間が制限されていて、この約束を守りたいから私はこの問題はこらだけで打切つておきます。
(注)
※川上貫一:衆議院議員(日本共産党)
※小瀧政府委員:小滝彬(外務政務次官)
○中山(マ)委員 本日の発表によりますと、韓国の国防部が日本の沿岸から二百四十キロのところにございますところの竹島、これをアメリカ側がはつきりと朝鮮の領有に決定をしたということがいわれておりますが、この問題につきまして、外務省として、アメリカ側からこの問題に対する通告があつたかどうか、もしあつたといたしますならば、それに対して外務省としてはどういう態度をおとりになつたか、ここにおちつくまでの経緯を御説明願いたいと思います。
○岡崎国務大臣 そんな通告は全然ありませんし、従つてそこにおちつくとか、おちつかぬということも全然聞いておりません。
○中山(マ)委員 それでは、これは釜山からの通告のように出ておりますが、この新聞の記事は事実無根と考えてよろしゆうございますか。
○岡崎国務大臣 事実無根かどうか、つまり外務省なり日本政府なりは、全然承知しないことであります。
○中山(マ)委員 それではこういうことが、言われておるのでございますから、外務省といたしましては、韓国はこのごろは非常に行き過ぎのように私としては考えられますので、この行き過ぎを是正するという意味で、アメリカ側にこのことを申入れていただいて、そうしてぜひそういうことを一方的に発表してもらわないように、ひとつアメリカ側から御忠告を願うようにしていただけるかどうか。
○岡崎国務大臣 アメリカはイギリスとともに平和条約の提案者でありますから、アメリカにそういう話をするということもさしつかえないわけでありますけれども、平和条約ですでに日本の領土に関しては、きまつておりますから、どこの国が何を言おうとも別に意に介する必要はないのでありまして、われわれは特にアメリカに頼まなければならぬというほどの必要も認めておりません。
(注)
※中山(マ)委員:中山マサ衆議院議員(自由党1950)
※岡崎国務大臣:岡崎勝男外務大臣
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昭和28年03月05日 第015回国会 参議院 外務・法務委員会連合審査会 第1号
○委員長(徳川頼貞君) 只今より連合委員会を開会いたします。
議題は竹島の領土権に関する件であります。竹島に関しましては平和条約により日本領土であることは明白であると考えられておりますが、去る二月二十八日の毎日新聞によりますと、韓国国防部の発表として、韓国が竹島の領有権を持つことを米国が認めたというのであります。かかる不当なる発表が大邦丸事件が起つたばかりのときに行われたことは甚だ遺憾の次第であります。それで特に法務委員会とも連合の上で、この問題について質疑をしたいという次第であります。御質疑のあるかたは順次に御発言を願います。
○伊達源一郎君 外務政務次官にお尋ねいたしますが、この竹島問題は平和会議のときに、もう日本の領土であるということの確実なことが決定しておるはずであります。私はその当時西村条約局長に尋ねたのですが、もうそれは確実にきまつておるから問題はないのだということでありましたが、先月の二十八日の新聞には、韓国側が韓国の領土であるということを声明し、米国がそれを承認しておるということでありますが、この真相と、この問題についての外務省の見解とを政務次官から御説明を願いたい。
○政府委員(中村幸八君) 二月二十七日におきまして、韓国政府の国防部が竹島の韓国領有につきまして米国の確認を得た旨の声明を発表したとの報道が伝えられておるのであります。併し外務省といたしましては、この問題につきましては何ら正式にいずれの方面からも通知も通告も受けておりません。お話のように、竹島につきましては古くから日本の領有であるということにつきましては何人も疑いなかつたところであります。今日といえども、日本の領有であるという確信を持つておるのであります。それにつきまして韓国政府の声明なるものが発表されましたにつきまして、一応外務省としての見解、又従来韓国政府と日本国政府との間にいろいろこの竹島の帰属の問題につきまして交渉せられた面もありまするので、それらの経緯につきまして御説明申上げたいと存じます。
竹島の概況、或いは日本領有の経緯と経営の大要につきましては、只今お配りいたしました「日本海の竹島について」というパンフレツトによりまして御覧を頂きたいと思うのでありまするが、確かに日本の領土であるということについては、何ら疑いを容れる余地がないのであります。竹島の帰属が問題になりましたのは、昨年の一月十八日に、李承晩大統領が海洋主権の宣言を行なつて以来のことであります。この李承晩大統領の宣言は、韓国の魚族保護の水域を確定するに当りまして、竹島をもその範囲にした、即ちいわゆる李承晩ラインの中に一方的に取込んでしまつたのであります。そこで我がほうといたしましては、この李承晩大統領の海洋主権宣言に対しまして、一月の二十八日付を以ちまして韓国代表部宛に口上書を以て抗議をしたのでありまするが、その際同時に竹島の問題につきましても、この宣言において、韓国は竹島として知られている、或いは又リアンクール・ロツクスとして知られておるところの日本海の小島に領土権を主張しておるように見えるが、日本国政府は当然日本の領域である竹島に関する韓国のかような僣称又は要求を絶対に認めるものではない、こういうことを特に主張しておいたのであります。ところが韓国側はこの李承晩ラインに関する我がほうの抗議に対しまして、二月十二日付口上書を以て反駁して参つたのでありまして、その際同時に竹島についてもその懸隔を深くいたしております。それによりますと、韓国政府は数世紀の間朝鮮で独島として知られているリアンクール・ロツクスの領有に関し、ここで仔細に亘つて議論を行おうとは思わないが、一九四六年一月二十九日付のスキヤツピン第六百七十七号によりまして、スキヤツプが同島を日本の領有から明白に排除したこと、それから更に同島はマツカーサー・ラインの韓国寄りに置かれておること、即ちこれらの二つの事実は同島に対する韓国の要求に同意し、これを確認するものであつて、何ら議論の余地のないものであることを日本政府に想起せしめたい、こう言つておるのであります。我がほうといたしましては、当然これに対し直ちに反駁することができ、又その必要があつたのでありまするが、あたかも日韓会談の進行中であつたので、それがための適当な時期を待つことといたしておつたのであります。然るに四月末に至りまして日韓会談は停頓となり、一方講和条約の発効も間近に迫りましたので、それ以前に本件に関する我がほうの主張を韓国側に表明して置くほうが適当と認められましたので、四月の二十五日付韓国代表部宛に口上書を以ておおむね次の通りのことを申送つたのであります。
即ち竹島は従来より日本領であつて、韓国側の主張は次に述べる理由によつてこの事実に何らの変更を加えるものでない。
第一に竹島は現に島根県穏地郡五箇村の一部である。
第二にスキヤツピン第六百七十七号は日本政府が竹島に対して政治上、行政上の権限の行使又は行使を企図することの停止を命じたにとどまつておりまして、竹島を日本政府の領域から排除したものではない。現にその覚書自体におきましても、この覚書による日本の定義が、ポツダム宣言の第八項に述べられておる諸小島の最終的決定に関する連合国の政策と解してはならない旨を断つておるのであります。
第三にマツカーサー・ラインを規定した覚書自体においても、マツカーサー・ラインは国家統治権、国際的境界、又は漁業権の最終的決定に関する連合国の政策を表明するものではない旨が断られておるから、竹島がマツカーサー・ラインの韓国寄りに置かれておることを論拠とする韓国側の主張は根拠とならない。且つ又マツカーサー・ラインはすでに撤廃せられておるので、この種の論議は全く必要がない。
第四に日本国政府の調査によれば、竹島が数世紀の間独島として韓国の領有にあつたという事実はない。
こういうことを主張いたしたのであります。この我がほうの主張に対しまして韓国側は、その後何ら正式の意思表示をして参つておらないのでありまして、爾来今日に至つた次第であります。然るに本年二月二十七日韓国政府国防部が竹島の韓国領有につきまして、米国の確認を得た旨の声明を発表したとの報道が伝えられたのであります。伝えられるところによりますると、右国防部の発表は、独島の帰属について、韓国政府と国連軍司令官との意見が韓国領土の一部であるということの点について一致を見、ウエンライト米極東空軍司令官から、この旨正式通知が届けられ、同時に米空軍による爆撃演習が中断せられた、こういうような趣旨のものであつたようであります。
果して米国側がさようなことを韓国政府に通知を行なつたものかどうかということは明らかでありませんが、察するに何らかの方法によりまして、米軍の爆撃演習中止の措置を知つた韓国側が、一方的にそれを歪曲して自己に有利な宣伝材料として使用したものではないかと考えられるのであります。この竹島は、日米行政協定に基いて合同委員会の議を経まして、海上演習場として昨年の七月二十六日の施設区域協定のリストに掲げられたものでありまして、米軍においてこれを演習場のリストから削除するということになれば、当然合同委員会の議を経なければならん性質のものであります。我がほうにおきまして爆撃演習が中止されておるということは、これは承知いたしておりまするが、演習場のリストから削除するということは、未だ合同委員会には上つておらないのであります。そこでこの際はつきりさしておかなければならない点は、竹島は本来日本の領有に属するものであるからこそ、日米合同委員会の議を経て、初めて米軍の使用する海軍演習場のリストに入れられたということであります。従つて韓国側の言うがごとく、韓国政府が米極東軍により何らかの通知を得たのが仮に事実であつたといたしましても、それた爆撃演習の中止に関するものであつて、竹島の帰属とは何らの関係がないものであると考えます。
以上一応本件に関する従来の沿革又交渉の経過、最近における新聞の声明の内容、更にこれに対する我がほうの見解につきまして御説明申上げた次第であります。
○委員長(徳川頼貞君) 外務大臣が只今見えられました。外務大臣はほどなく又予算のほうから請求がございまして、予算委員会のほうへ出席されるはずでありまするから、その間において外務大臣に御質疑のある方はどうかお願いいたします。
○伊達源一郎君 只今の経緯は、これは外務次官から詳しく承わつたのでありますが、外務大臣が見えましたから、外務大臣に質問をいたしたいと思います。この竹島問題で、韓国がああいう勝手な声明をしたのに対して、外務省はどういう措置をとつておられるか、外務大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 今政務次官から御説明のように、竹島の帰属というものは、我々は明白なことであつて、疑いを挾む余地は殆んどないと思つております。従つていろいろ声明をしても、これは結局雲散霧消するものであろうと思いますので、徒らに言葉尻を掴えて議論をすることは、半分ぐらい向うに権利があるような印象を与えても却つていかんとも思うので、何もする必要はないという考えでおります。
○伊達源一郎君 一方がそういう声明を出しておるのに、何もせずに放つておいて、その声明が有効になるような心配はないのですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 何もしないのなら別でありますが、今までに公文書その他で日本の態度を明らかにしておるのであります。これ以上明らかにする方法はないのであります。従つて例えば正式に向うから申出て来るというような場合には、これは当然やらなければならんのでありますが、それでないいろいろのアドヴアルン的な声明に対して一々取合つていることは、却つておかしいのじやないかと今のところは思つておりますが、これが又何か烈しくなればやらなければならんでありましよう。今のところはその必要はないと考えております。
○伊達源一郎君 平和条約締結のときに西村条約局長から、竹島問題は、はつきり日本の領土ということにきまつておるから心配はないのだと言われた。その根拠は今政務次官の説明せられたような程度ですか、法律的に、条約的にはつきりしたことがあるのかどうか伺いたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) 平和条約は、日本が権利権限その他を放棄すべき地域は定められております。それ以外の旧日本領土は、当然日本に帰属すべきものである。一々列挙はいたしておりませんけれども、これが当然の解釈だと思います。
○團伊能君 李承晩ラインは、韓国側の一方的な宣言でございまして、日本といたしては、これを認めていない状態はよく我々共承知いたしておりますけれども、李承晩ラインの中側における漁業は、これに制限を加え、旦つ日本の漁船がここに入ることを許さないということを声明いたしておりますし、現に拿捕せられました日本の漁船について、韓国側の言い分といたしては、李承晩ラインの中に侵入したことによつて拿捕したというようなことを声明しておりまして、李承晩ラインというものは一方的宣言でございますが、そのうちにおきまして、韓国はすでに一つの行動を実施しておるのであります。そういたしまして、この島根県に属しておりました古い名で言うリアンクール・ロツクス、竹島が日本の領有であり、これが李承晩ラインの中にあり、而も日本の漁船の自由なる航行をも妨害するという行為が現実にありまするときは、これは日本の主権のある領土に対して一つの制約を加えて来るのでありまして、日本の領土権或いは主権の侵害であるということを考えられます。その点で只今外務大臣はただ一つの声明であるから、こういう場当り的の声明であるから、これをとり上げないと言われましたが、それも一理ありますけれども、この日本の領土の主権を制約するというような韓国政府の行為となりますと、これは日本国といたして放置できない重大な問題ではないかと考えますが、その点におきまして外務大臣のお考えをもう一度承わりたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 竹島に行く船が妨害されたということは聞いておりませんが、そういうことがあれば勿論それに対する措置をいたします。
○團伊能君 なお、一つこういう事件が起りますと、我が国の周囲を取巻いておる島嶼の帰属につきまして、外務大臣が言われるように、日本の領土から離れたところの領土の区域は、明らかに残るところは日本の領土として認められたわけでありますけれども、更に正確な日本の領土の範囲を国際的にレジスターするというようなことは、従来国際慣行としてありますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 私の知る限りではそういうことはないと思いますが、ただつまり何と申しますか、畳で言えば、真中のほうは問題なくて、縁のほうになると問題が仮にあるといたします。そういう場合には、例えばフランスと日本との間に西沙島の領有というような議論もあります。どつちの領有であるか、或いは南極についてどつちの領有であるか、それは非常に端のほうであつて、そういう場合もありますが、一般に日本の領土はこれこれであるということでレジスターするということはないと思います。又実際上はそこに行政権が及んでいるわけでありますから、問題はないわけであります。
○團伊能君 然らばこの島の領有に関して国際的に最後的な判定をする場合に、いろいろな曲折がございましようか、若しもこれがどこかに提訴いたしまして明瞭に島の帰属を決定するというような何か方法がありますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは平和条約の解釈という問題になれば、条約の規定によつて或いは国際司法裁判所というようなことが考えられますが、これについては解釈ということではないと思います。もうそれにも当らない問題だと考えます。
○團伊能君 然らば、若しも韓国政府が実力的にこの島に行く漁夫に対して危害を加えたり、その島の領有を実力的に主張するとか、或いはこの島を領有し、これを守つて日本人に行かしめないというような事実が起つたといたしましたときには、どういう解決をいたしますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは実際上の問題でありますから、能う限りの善処をいたすようにいたしたいと思います。例えば歯舞、色丹も、日本は領土だと主張しておりますが、今これに武力を用いるとか、その他の力を用いるというところまでは考えておりませんが、これとそれとはまるで性質が違いますけれども、場合によつては、問題を平和的に解決するためには多少の時日を要することはあると思います。いきなり戦力武力で以て喧嘩をするというようなことにはすぐは行かないだろうと思いますが、方法いろいろあるだろうと思います。
<略>
○曾祢益君 私遅れて来て、外務次官の御説明をずつと聞いて、なかつたので、或いはとんちんかんなことを伺うかも知れませんが、今の伊達委員、或いは團委員と外務大臣の質疑応答を伺つておりますると、政府のほうでは、平和条約によつて日本が主権を放棄した地域というのは、これはきまつておる。そこには入つていないから、従つて竹島は日本の主権であると、そればかりではないでしよう。勿論その前にも日本が領有した事実があるということを言つておられますが、最近の日本の領土の変更に関する一番大きな国際条約は、言うまでもなく平和条約です。この平和条約には、日本から主権を放棄する地域には入つておらない、だから日本の領土だという主張が一つある。いま一つは、行政協定です。これに関連する合同委員会の作りましたアメリカ軍の演習区域の中に入つておる。従つて、これ又積極的に日本の領土であることが証明される。この二点が積極的な法律的な論拠になつておるのではないかと思うのでありますが、この点については、これはあらかじめお断りしておくべきことだと思うけれども、この島が日本の主権の下にあることについては一点の疑いも持つていないのですが、ただ、今の説明ぶりでいいのかどうかという法律論があるのじやないかと思う。殊に第二に挙げられたいわゆるアメリカの演習地として使用されておる、こういうような理由を挙げることは却つて論拠を弱めるのじやないか。例えば何らかの都合で演習地から落してしまうと、逆に韓国側の主張に応援するような論拠をこちらから与えたことになる危険がある。そういう論拠をお使いになることは不適当ではないか、これが第一点として伺いたい点です。
第二点としては平和条約の解釈として成るほど竹島については、日本の主権から離れる地域、或いは沖縄、小笠原等の特殊な主権、眠つている主権があると言われておる地域とは別でありましようが、併し一方から見るならば、独立する朝鮮という版図にこれが必らず入つていないということが今挙げられた論拠からは積極的な証明はない。それから第二には日本と韓国との間の条約ができない間は、平和条約の条項が少くとも韓国側を積極的に拘束するという理由は、韓国側はそういうものを認めないという主張は一応言えるかも知れない。そうなつて来ると、今までの御説明、それだけだつたと仮定するならば、それだけでは足りない。もつといわゆる独立する朝鮮側にないのだということと、日本の平和条約から見て日本の領土主権を放棄して、いない、この両方から証明して行くほうが更に論拠は強いのではないか、かように考えるのですが、根本はもともとこれは日韓の条約ができておらないことから起つていることなんですが、その速かなる日韓条約の締結に対して政府の施策が今まで遅れておる。いろいろな関係があるにしても、そこが結局根本的な欠陥だと思います。まあその政治論は別としても、今の平和条約の解釈、朝鮮独立問題との関連において、政府のもう少しはつきりした見解をお聞きしたい。
○政府委員(下田武三君) お答えいたします。先ほど外務大臣も言われましたが、平和条約との関係をもう少しはつきり申上げたいと思いますが、平和条約の第二条は朝鮮に関する領土を規定しておりまするが、これがほかの条項ですと、澎湖諸島、千島列島、新南群島、西沙群島、あいまいな言葉を使つておりますが、朝鮮に関しては何が朝鮮かということをはつきり書いております。「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮に対する……。」ですから朝鮮プロパーとその三つの島を限定的に挙げております点は、ますますこれは日本の論拠を強める規定の仕方ではないかと思います。
もう一つ行政協定の点について御意見御尤もでありますが、行政協定の第二条に施設及び区域の使用を許す規定がございますが、この竹島を演習場に指定いたしましたのは、この二条の区域に該当するわけでありますが、ここで日本国の施設とか日本国の区域とは書いてございませんが、日米間の条約で区域をとり上げるなら、これは日本の区域外にあり得ないわけでございますので、行政協定の第二条に基きまして合同委員会を通じて貸した区域ということは、これはもう明かに日本の土地である、領土であることを示す有力な法律的な根拠になると思います。それからなお向うの都合で区域から解除するということもある得るかも知れませんが、正式には再び若し削除するならば合同委員会にアメリカ側から持出しまして、あの竹島は演習場として使用する必要がなくなつたからということで、日米合同委員会に提起しまして、日米合意の上で施設のリストから削除する、そういう措置をとることになると思います。そういう措置をとるということ、これは又竹島が日本に領有する島であるということを明確に法律的に根拠ずけることになると思います。御指摘の二点につきまして我がほうの立場は法律的には極めて明確であると存じます。
○曾祢益君 どうも行政協定の施設に関する御説明は、私は必ずしも非常に強い論拠でなくて、却つて運用される危険を依然として感じるのですが、平和条約の点は確かに一つの論拠だと思いますが、済州島とか、鬱陵島とか、巨文島、これを含むという規定の仕方だけでは、余り明確じやないように思うのですが、その点は大丈夫なのですか。つまりほかにもいろいろな小島があると思うのですね、実際問題として。これを地図か何かではつきり海域の地図でも作つて緯度や経度から計つて、島の帰属をきめるような取扱をしていない場合には、例示的な「島を含む」ということについては……、私は重ねて申上げますが、竹島の領有に関する何らの疑を持つているわけじやない。だが法律的な説明ぶりがそれで完備しているのかどうか。この問題について伺つているわけなんです。今の程度だけでは必らずしも論議の余地のないほど明確だというふうには、この平和条約に論拠を置いた議論だけでは、私はいけないのではないかという危惧の念を持つたから重ねて伺つているわけなんです。殊に、再びあの行政協定のほうに関連しますが、これは何ら韓国に対する主張すべき積極的な根拠になりません、これは……。その点を伺つている。
○政府委員(下田武三君) 平和条約の第二条の「含む」というところでありますが、これはそう言いませんと、朝鮮プロパーだけになるといけませんから、それで朝鮮プロパーだけではないのだと言つて、念のためにこの三つの、念のためと申しますか、はつきりこの三つの島をこれは公海の真中に点在しておる島でございますから、諸島とか群島とかいう概念にも含まれないぽつんとある島を三つ拾つて、そうして朝鮮に含めた、そういうように解釈されるのであります。併しおおせのように幾多の条約の先例のように条約の附則に地図を付けてちやんと明確にするというやり方は、確に最も明確な規定の仕方だと思います。けれども、これは将来韓国との間に基本条約でもできましたときに、一つの非常に有効な方法だろうと存じます。併しながら平和条約では、ほかの領域の規定の仕方と不均衡に韓国の関係だけを詳細に規定する或いは地図を付けるというわけにはいかないので、全体との調和の見地から簡単ではございますが、私どもの見解によりますと、極めて明確な規定の仕方、韓国との領土の関係についていたしておるように存じます。行政協定との関係につきましては、曾祢さんは、それは根拠に援用し得ないとおつしやるのでございますが、アメリカが若し竹島を韓国領土だと見れば、韓国との間の取きめによつて、韓国政府の同意を得て、施設を使用さしてもらうという立場をとるのでありますが、それをしないで日米行政協定の規定に従つて日米合同委員会にかけて貸してもらうという措置をとつたことは、日米間の問題ではありまするが、これ又極めて明白な事実だろうと思います。
○團伊能君 曾祢君の御質問に関連してちよつと伺いたいと思います。私は曾祢君の行政協定関係の論拠は、却つてこの領有に関する問題を侵すような形で弱くなると言われる御思想は全く意見一致いたしますので、若しもそういたしますと、先ほど韓国の発表にありました、真偽は知りませんが、ウエンライトその他の通告というものも同じような価値を持つて来るような形になりはしないかと思います。それでもともと行政協定或いはこの今の軍司令官の発表は、領土その他の問題を解決すべき正確な基礎を作るものではなく、作戦上その他の便宜上から出ておる問題でございまして、これらの米国軍なるものが領土その他、外交的な適格性を必ずしも認めての上に、且つ専門的な知識の上に立つておるものではないと思いますので、これは私も曾祢君と同様に余り論拠にならないと思いますが、ここに一つ伺いたいことは、韓国が従来これは韓国の領土でありと主張していたといたしますと、この講和条約で日本の施政権が届かなくなる、切り離されて行く土地というものが、日本の国土を規定するということについてどういう関係になりますか。御承知の通りこれは日本の施政権の中にありましたのは無人の島嶼でございまして、考え方によつては拡張すればここに人は住んでおりませんのでそういう主張も一応成立つのじやないかと思いますが、そういう場合、もともと日本の領土でないから日本の領土から離れるという規定の中にないという主張をされた場合に、非常に問題が不明確になつて来るんじやないかと思います。その点を一つ伺いたいと思います。
○政府委員(中村幸八君) 先ほど御説明申上げましたように、竹島は島根県の穏地郡五箇村の一部でありまして、これは古くから日本の領土であるということははつきりとしております。朝鮮総督府の管理区域にあつたわけではないのでありまして、島根県の穏地郡の五箇村の一部であつたわけであります。その点は至極明瞭じやないかと思います。
○團伊能君 なお念のために伺いますが、朝鮮の領土に巨文島、済州島、鬱陵島を規定しておると言われますが、この竹島は鬱陵島の南にある島嶼でございまして、これはこの済州島やほかの二つの島の規定は勿論、周辺の岩礁その他を含んでおるものだと思いますので、この竹島を鬱陵島の附属の岩礁というような工合に解釈される虞れはありませんでしようかどうか。
○政府委員(中村幸八君) 鬱陵島とこの竹島とは余りに距離が隔つておりますので、その附属の島という考え方は常識からいつても容認できない問題だと考えます。
<略>
○平林太一君 今の問題ですが、韓国側領有だと称しておるものを強調し、裏付けているものに現在ウエンライト司令官があるが、いずれにしても米国政府と考えてよろしいか。それからこういう了承を得たというのですが、先刻外務大臣の説明、又今政府からのこれに対する答弁を伺つておる中にも。それならばやはりこの当然の措置として外務省は米国政府に対して先ずその真偽を確かめるということを当然なさなくちやならない、その真偽を確かめて事実だということであれば、私はどういう根拠で以てそういう我が方の今まで外務省説明の通り極めて明白な我が領土をそのようなことをするか。まさにこれはいわゆる盗取である、領土をかすめ取る、或いは横奪するということにこれは相成るわけであるが、その経過はどういうふうになつておるか、お答えを願いたい。
○政府委員(中村幸八君) 韓国国防部の発表によりますと、只今のお話のようにウエンライト司令官からこの旨の正式の通知があつたということを、こういうことを伝えておりますので、我が方といたしましては、非公式ではありましたが、昨日早速アメリカ大使館に参りまして、事実や否や、真偽を確かめたのであります。アメリカ大使館におきましても只今のところそういうことは承知しておらない、但し爆撃の演習を中止しているということは事実である。こういうような話がありました。更に一層事実を確かめるように依頼いたしているのであります。その調査の報告を待ちまして更にとるべき手段があればとろうと考えております。
○平林太一君 只今外務次官から昨日そういうことを米大使館に交渉いたしたいということでありますが、甚だ行動が怠慢であるということをこの際強く述べたいと思います。すでに昨日大使館に行かれて交渉したというようなことは、我が方に対して何か弱味があり、或いは何かそういう韓国側の強い態度に対しまして非常に退嬰的であるということが、こういう問題は更に更に問題を複雑化するということになるのでありまして、今後これは過ぎたことはいたしかたがないのでありますが、外交の機微というものは間髪を入れずして処理しなければ、非常な迷惑をこうむり主客顛倒することが考えられるのでありますから、この点十分今後の問題に対して厳重に外務省に対しまして私はこの際戒告をいたしておきたいと思います。非常にこれは怠慢であり失態であるということを申述べたいと思います。それに対しまして何か御答弁ありますか。
○政府委員(中村幸八君) 私昨日大使館に参つたということを先ほど申しましたが、これは事実が多少違つておりまして、ずつと以前に照会をいたしたのでありまするが、昨日大使館に参りましてそういう返事をもらつたわけであります。なお只今のお話の外交は間髪を入れず機敏に折衝すべきであるということは至極御尤もなお説でありまして、そういう方針で我々はやつておりまするが、ただこの問題につきましては、先ほど大臣が申されましたごとく、余りに明瞭過ぎる問題であつてこれを格別に取立てて論議するということは却つてこちらに弱味があるのじやないかというようにもとられる虞れがありましたので、わざと今日まで黙認し知らん顔をしておつたようなわけでありまして、決して怠慢でもなく、我々は考えるところがあつて別段抗議もせず声明もせず今日に至つたような次第でございます。
○平林太一君 昨日でなくて遡つて遥かな時代にそういうことをいたしたということでありますから、私から申上げたことはそれで肯かれることでありましようが、十分申上げておきます。それでこの問題は何か外務大臣がことさらそういうことをいたすことは、当然のことであるので、却つて反抗がましくなるのだということでありますが、これは四囲の情勢で韓国側に対してはあるのです。併し米国側に対してはそういうことであつてはならない。韓国に対して事態がそういう極めて明瞭なことであるから戦争中なのでやつたのであるということでありますからいいのでありますが、併し米国に対しましては、米国自体が我が領土に対して韓国政府とそういうようなことをいたしたことは、ウエンライト司令官がそういう発表をいたしてあるのであるから、これは事実としてよろしいのでありますので、当然の処置を米国に対して厳重にこの際することは極めて必要だと思います。現に李承晩ラインに対しましても更にそういうことでなかつたということを、我々は米国の日本に対する信というものを深く信じてさようなことがないと、こう善意に解釈いたしていたのでありますが、併し今回の問題のようなことが発生してみますと、やはり李承晩ラインの裏面に米国が何か暗中摸索しているのだということを事実の上にこれは立証するものであります。そうでありますから、今外務次官の言われる見解と私は違います。米国に対しましては今御言明になつたような態度でなくてこの際厳重な交渉をして、そうして若しそういうことをするならば事前に我が方に対しては外務省に対しましてそれぞれの処置なり手続なり折衝をして、どうしても軍事上必要であつて困るというならば、話はそのときは別であります。さようなことを必要であるというために、全然我が方に何らの話もなく、いわゆる朝鮮との間に世俗で申せば闇取引である、闇取引と申しましても自己のものではない、よそのものを闇取引するというので、甚だ許すべからざることであると思います。こういうことに対して私は非常な強硬な態度を以て米国政府に向つて外務省は臨むべきところの態度をこの際表明せられることは極めて大切だと思いますが、どういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(中村幸八君) 御意見御尤もと存じます。でありまするのでアメリカ大使館側に事実の調査を依願いたしておりまして、その調査の結果によつてウエンライト司令官が実際にそういう正式通知を韓国政府になすといたしますれば、我が方といたしましては厳重なる抗議をいたす考えであります。
○平林太一君 大体そこで外務次官の御答弁で私も了承をいたしましたが、この際附帯して申上げておきたいことは、李承晩ラインに対しまする今あのような竹島という問題が出て来たのでありますが、これは重大である。要するにこういう問題も李承晩ラインというものが一応先方の優越感といいますか、そういうようなものがこのようなことを声明せしめるのでありますが、それですから李承晩ラインに対する米国と韓国との関係に対する信義の確立というものは、この際極めてこれはあいまいになつております。それですべての問題は、米国と日本の問題は米国と、日韓間の条約に対することは日韓の条約でやる、かような問題につきましていわゆるこれはあいまいもこにいたしまして、そうして何か日韓条約のために大事なことだということは、決して私は日韓条約の相互の友好提携の上に、条約締結のいわゆる軌道に乗るべきものではないと思います。でありますから、この点一応申上げておきたいのでありますが、これは李承晩ラインに対します私の只今申上げましたことに対しまして、次官はどのような御見解を持つておられますか、これは私は非常に弱腰では困ると思うのでありますから、一応承りたいと思います。
○政府委員(中村幸八君) 李承晩ラインに対しましては、外務省といたしましては絶対に容認ができんということは、再々申述べているところでありまして、又アメリカ側といたしましても、国連側といたしましても、李承晩ラインというものとクラーク・ラインというものは全然関係がないということをはつきり申しております。ただ韓国側では国防水域と李承晩ラインとを結び付けて、そうして韓国側に有利に事を導こうというような意図があるやに推察されまするが、国連軍として或いはアメリカとしてはさような考えは全然ないように承つております。
○杉原荒太君 さつきから政務次官の言われることを聞いておりますと、竹島が日本の領有だということ、それについては私も疑問を持たないけれども、それを主張して行く立論の仕方が非常に薄弱ですよ。もう少しよく研究されないというと、これは今まで日本のどこそこの領域にあつたということなどじやなく、もつと本当に国際的に主張し得るような立論の仕方をもう少し研究されたほうがいいと思います。条約局長その辺のところまだもう少し私は精密に研究される必要があると思います。
それから念のために一つ聞いておきたいと思うのですが、日本側でも韓国の領有たることを争わない、まあ認めている島で、そうして而も韓国の領海外にある島がどれくらいあるか。全然存在していないのか、存在しているのか。その辺のところを調べておられるのか。
○政府委員(下田武三君) 私の主管する条約局では調査はやつてありませんが。
○杉原荒太君 それを調べておかんと、あなたがさつき言われたこれこれの島を含むという条項を援用しても論拠薄弱になつてくる。
○政府委員(下田武三君) 併し韓国の極く近いところの岩礁とか何とか……
○杉原荒太君 それだから私が言つているのは領海外で……
○政府委員(下田武三君) そういうものは地図を一見したところはございません。更に綿密に海洋調査式のことをやれば……
○杉原荒太君 それは竹島以外には別にないのですか。
○政府委員(下田武三君) 現在までの調査はないと承知しております。我々は曾つて疑いを持つたことがない……
○杉原荒太君 私の言うのはですよ。つまり領海外の島で、そして而も今韓国の領土と認められている島が、さつき挙げられた平和条約に列挙してある島以外にもあるかないかということ。
○政府委員(下田武三君) 条約に取立てて書くような島はございません。それから竹島はここに書いてあります鬱陵島よりも更に日本に近い所にあるのでございますから、若し韓国寄りにあるとか、或いは鬱陵島と韓国と等距離ぐらいにあるのでしたら疑いはございますけれども、沖ノ島と鬱陵島との中間にあるわけでございますから。
○杉原荒太君 私は今議論を聞いているのじやなくて、そういう事実があるかどうかということを聞いている。それがあなたがたが論拠を立論するからには大事なんです。僕はあなたがたが立論をもつと正確にする必要があると思うから聞いているのです。
○政府委員(中村幸八君) お説の点は十分調査いたしたいと思います。
<略>
○中山福藏君 この際政府に確かめておきたいことがあるのですが、それは日米合同委員会の爆撃演習地として一応竹島が入つておつたのを、この頃抜かれておるというのはどういうわけですか。向うが勝手に抜いたというわけですか、そこを一つ。
○政府委員(中村幸八君) 日米合同委員会によつて選定いたしました施設地域協定の中から除かれてほおりません。ただ実際爆撃演習場として使用しなくなつたということだけだろうと思います。
○中山福藏君 それはウエンライト米空軍司令官の日本領でないということを認識してそういう挙に出でたのではないかという疑いが一応持たれるのですが、それはどうですか。
○政府委員(中村幸八君) 我方はそういうふうには考えておりません。
○中山福藏君 そこで一つお伺いしておきたいと思うのですが、これは韓国側の言うことも日本側の言うことも一通り筋を立てて手がけて来ておるものと思う。私どもは日本人として日本の領有であるということを固く信じておるのですが、併し結局両方から水をかけ合つておるというのが実情であります。然らばこの水をかけ合つておることを一つの解決するという姿に持つて行くにはどういう手段方法を講ぜられるつもりか、それを一つ承わりたい。
○政府委員(中村幸八君) その点は先ほども外務大臣が申されましたごとく、別段今ここに取立ててこの問題を協議すべき性質のものではない、明々白々、我が日本の領土である、こういう観点に立つておるのでございます。今後なおこの問題が一層紛糾するような虞れがありますれば、何らか適当の方法によりましてはつきりと我が方の主張を声明するなり、或いはアメリカ大使館を通じて、或いは又直接に韓国政府に対して抗議を申込み、適宜そのときに応じた方法をとりたいと思います。
○中山福藏君 これ以上紛糾して来れば適当な処置をとるとおつしやるのですが、大邦丸事件以来一をとつて二をとるというような金内務長官とか或いは李承晩声明というものは相当日本というものを蔑視してかかつておると私どもは考えておる。これはいわゆる蔑視ということはすでに日本何するものぞという態度を示しておる、これはやはり外交的の一つの紛糾です。適当な処置をとるということは現在とらなければならん、それでこれ以上紛糾したら適当な処置をとるということは、これは私は当局としてはそういう何と申しますか、先ほどの平林氏の言葉を借りて言えば、一種の怠慢的な私は態度だと思う。それよりも現に私どもこれを紛糾と見ておるのですが、それを解決する手段、方法、計画というものは外務省にはないのですか、それを一つ。
○政府委員(中村幸八君) まだ韓国政府の声明なるものが発表されただけでありまして、その内容の真偽のほども明瞭でありませんし、目下事実を調査いたしております。その程度ではまだ紛糾とは言えないのではないかと考えております。この上更に話がもつれて来るような場合におきましては必ず何らかの強硬な方法をとるというように進みたいと考えております。
○中山福藏君 それも大邦丸事件といい、或いは今度の竹島問題といい、これを共に日韓会談のときに持込まれるつもりでありますか、或いは日韓会談と別個にこれを処理するという意向があるのですか。向うのほうからいろいろなことを言つて来なければこれに対応する手を打たんというようにも聞こえるのですが、その点はどうでしようか。
○政府委員(中村幸八君) 大邦丸事件につきましても日韓会談とは切り離して別個にこれはこれとして解決する、こういう方針で進んでおります。この点につきましては韓国との間のもつれが生じたそもそもが目撃談そのものではないのでありまして、李承晩ラインの一方的海洋主権宣言についての我が方の抗議から始まつた問題であります。従つてこの問題は日韓会談とは別個に取扱いたいと考えております。
○中山福藏君 その別個の方法と、並びにその着手せられる時期はいつ頃ですか。
○政府委員(中村幸八君) アメリカ大使館に事実の調査を依頼いたしております。これを督促いたしまして、その結果が明瞭になりました上でとくと考えたいと思います。
○中山福藏君 最後に一つお伺いしておきますが、先月の二十八日の午後一時半に伊関国際協力局長が大阪に来られて大阪クラブで講演をしておられるのですね。いわゆるアメリカの軍需品発註に関する註文というものが相当増大するだろうという前置きをして約二時間半に互つて演説された。そのうち地域防衛協定というもの或いは日米防衛協定というものをする時期が来るといつた、両当局者の間にこれが進行中であるという演説をされた。三、四日前ですね。そこでその地域防衛協定というようなことが、これは日米合同委員会の理事ですか、委員ですかしておられる伊関さんの言葉でありますから、私はこれはまあうそだとは思いませんが、そういうときにこの地域防衛協定というのは竹島なんか入ることになつておるのですかどうですか。これは外務省として大阪に派遣された伊関さんの言葉ですから、一応一つ念を押しておきます。
○政府委員(中村幸八君) 伊関局長が大阪でどういうことを言われたか存じませんが、恐らくそれは誤伝ではないかと考えております。なお地域防衛協定なるものは総理或いは大臣からも再々申上げておりまするごとく、今日日本は軍備を持つておらない、従つて地域防衛協定というようなことは考えておらない、こういうことを述べております。又なおこの竹島問題が地域防衛協定にどういう関係があるかということは、これはまあ地域防衛協定を考えておらないという点からいたしましてお答えすべき筋でないと思います。なおこれは日本の領土であるという点から言えば、仮に若しそういうような協定を結ぶとすれば、日本の領土の一部として防衛の対象にはなると思います。
○中山福藏君 それは誤伝であるとか何とか絶対に私はあなたから言われたくない、これはもう事実です。厳然たる事実です。伊関局長はこう言つたのですよ。今アメリカから軍備のために要求されておる兵数は三十二万五千人だ、併し本年度は四万しか増員ができない、こう言うのです。ですから誤伝とか何とか言うには伊関さんが大阪で言われたということをお調べになれば誤伝か真伝かよくわかるのです。ですから私は念を押しておくのです。だから、そういう次第でございますから、私はこの地域防衛協定なんかというようなものができれば或いは我々の心配しておることも解消されるか知りませんが、それができるまで待つておることはできんというような立場から早急にこれは解決すべき問題である。この竹島問題は解決すべき問題であると思つておるから私はこう言うのですが、紛糾した場合に適当な措置をとるなどということは、これは私どもはあなたがいつおやりになるか知りませんが、百年河清を待つような政府の答弁を頂きたくない。だからこれは特に私は念を押して政府の覚悟を促さなければならんと思うのです。今まで日本の外務省というものはいつもこの手で国民をだまして来た。私どもはもうだまされたくない。だからできるだけ速かに私は何らかの措置を講ぜられんことを切にお願いして私の質問を終つておきます。
○伊達源一郎君 ちよつとお尋ねしますが、竹島は李承晩ラインからどのくらい朝鮮から言うと内側にあるのですか。
○政府委員(中村幸八君) 李承晩ラインの殆んど線すれすれのところにございます。正確にまあ距離を申述べることはできませんが、これもなお調査いたしまして御報告いたします。
○伊達源一郎君 李承晩ラインを日本の領土である竹島すれすれに引いたとすると、そこには非常に大きな問題がなければならん。李承晩ラインの声明に反対の申入れをしたときにこの竹島のことについて言及されておるかどうか。
○政府委員(中村幸八君) 李承晩ラインの宣言に対する我が方の抗議の際に、最後に付け加えまして竹島が李承晩ラインの中にあるが、これは我が方としては絶対に容認できないということをはつきりそのとき伝えてあるのであります。
○伊達源一郎君 この李承晩ラインをそのときに韓国の方ではこれを韓国の領土として入れようとするインテンシヨンがあつたのじやないかと思いますが、外務省はどういうふうに解釈されますか。
○政府委員(中村幸八君) その点は韓国側の意図ははつきりいたしませんが、李承晩ラインは魚族保護という見地からこのラインを引いておるのでありまして、直接領土というものとは関係ないのじやないかというようにもとれますが、御説のような考え方も想像できるわけであります。いずれにありやはつきりいたしません。
○團伊能君 竹島問題は一種の岩礁の人のいない島の問題でございますけれども、こういうことが起つて来ると仮定いたしますと、日本国民がその領土として住んでおるところの地域に対して国民といたしまして、一種の大きな不安を抱かせられる問題だと思います。事竹島のみならず、日本は御承知のごとく周辺海をめぐらしておりまして、数多の島がございます。ポツダム宣言その他で書いてある極みて大ざつぱな四大島及びそれに附属する島嶋というようような観念で日本の領土を考えることができない。もつと非常に正確な微細に亘る地域の決定を何らかの方法においてして頂かなければこれは我々として安心できないような印象を持ちます。殊に歯舞群島のごときがこれが果していわゆる条約にございますキユーリル・アイランドであるかどうか、即ち千島であるかどうか。若しも千島でない、北海道附属島嶋であるといたしましたとき、それは国籍は日本にあつて只今ソ連軍の占領下にあるという状態になりますが、ほかのいろいろそういう島嶋もございますが、併し先ずこれに連関して歯舞群島のステータスはどうか。キユーリル・アイランドと申されますのは日本の領土であるかないか、その地域は。日本の現状の姿を簡単に、できたら併せて御説明を伺つておきたいと思います。
○政府委員(下田武三君) 平和条約の規定によりましてそういう不明確な問題は発生しないわけなんでありますけれども、誠に根拠のない韓国のような横紙破りを主張するから問題が起るのであります。現在のところ只今御指摘の歯舞、色丹両島とこの竹島以外に何ら紛争の発生が現実にございませんし、又ありそうな島もないわけでございまするから、その点は御懸念が不要ではないかと存じます。なお先ほどの政務次官の御説明を補足さして頂きますと、この間の国防部の発表のありました直後に私アメリカ大使館員と会いましたのですが、念のため聞きますと、米大使館は一笑に付しておりました。これは余りにも明白な問題であつて取るに足らんという態度であつたのであります。それで米軍の関係者と伝えられておりますのも軍の人間でありますし、韓国の国防部の発表でありまして、両政府の立場を代表する立場にある者が言つたことではないのでございまして、アメリカ自体が一笑に付しているような問題を日本が余りに大きく取上げて行くということは均衝を失しているのではないか。そういう考慮もありまして単に調査を求めて、そうしてその回答を待つておりましたが昨日回答がございました。内容はこれはただ軍で爆撃の演習を停止したというだけの事実の回答でありますので、迫つて米国政府の見解はアメリカ大使館から正式にあることと存じます。
(注)
※伊達源一郎:参議院議員(無所属)
※中村幸八政府委員:外務政務次官
※岡崎勝男国務大臣:外務大臣
※團伊能:参議院議員(自由党1950)
※曾祢益:参議院議員(日本社会党)
※下田武三政府委員:外務省条約局長
※平林太一:参議院議員(無所属 )
※杉原荒太:参議院議員(自由党1950)
※中山福藏:参議院議員(緑風会)
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昭和28年09月17日 第016回国会 衆議院 外務委員会 第30号
○ 田中(稔)委員 外務省の方にお尋ねいたします。竹島の問題につきましては、これが日本の領土であるという主張は、日本側の主張として私ども聞いている、われわれもそうだと思つているのでありますが、一方韓国側は、韓国の領土であると主張しているわけです。その主張が理不尽なものであろうと思いますが、やはり韓国側の主張は一応主張として私ども参考には聞いておきたいと思います。外務省の方ではよくわかつておると思いますから、その点につきまして私どもに御説明を願いたい。なおこの竹島問題は非常に大きな問題として国民の眼に映じておりますが、政府としてはこういう問題が起つたのをむしろ得たりかしこしとして、だから再軍備をしなければなら、ぬ。だから保安隊を増強しなければならぬというような、何か宣伝の具に使われるという底意があるのではないか、新聞あたりも非常に大きくこれを取上げておりますが、私ども社会党左派としてはそういう心配をしておるのであります。私どもは、そういう問題の解決は実力によつて対抗するというより、やはりこれは国際的に公正にして合理的な解決を見るのでなければならぬ、従つてわれわれとしては国連に提訴するとか、国際裁判所に提訴するというようなことで、問題を解決しなければならぬと思います。そういう考えも持つておりますので、やはり日本側の主張はもちろん主張として、また向う側の主張はたといそれが理不尽なものでありましても、一応その説明を聞くということが必要だと思うのであります。条約局長でもけつこうですけれどもできるだけ詳細に御説明を願いたい。
○下田説明員 この前の委員会でも申し上げましたが、実は竹島を韓国の領有なりと主張する根拠は、ちつともわからなかつたのであります。何度も抗議、逆抗議の文書の往復をしておりましたが、わが方は詳細なる歴史的、民族的いろいろな根拠をあげて、日本領である理由を申しておるのに対し、先方はそれを反駁する何らの裏づけがなかつたのであります。そこで先般の委員会でも、たとい竹島の問題が国際法廷に持ち上つても、完全に勝つ自信があるというようなことを申したのでありますが、その後最近になりまして、初めて韓国が竹島――韓国では独島といつておりますが、独島は韓国領なりと信ずるゆえんのものを非常に詳細に申して参りました。しかしこれは外国の文書でありますから、かつてに日本側で発表することは差控えたいと思いますが、ポイントだけ申しますと、日本側が歴史的、民族的にあそこは日本領だというのと同じように韓国も、あそこは韓国領であるという文献等をあげております。その文献の中には日本の文献も入つております。そこで長い歴史の上には鬱陵島に住む韓国人が、漁業等のためにあそこへ行つたということは、あたかも日本国民があそこに行つたことがあるように、その点は事実かもしれません。しかしそれは必ずしもあそこか韓国領であるという根拠にはならないのではないかと思います。もう一つのポイントは、平和条約で何にも言つてないということは、あれが日本領になつたことではない、日本側は、鬱陵島その他の島は韓国に行くことを平和条約で明記されておるからそうなるのであつて、平和条約に明記されてないものは当然日本側にそのまま残るのだという主張であるが、そんなことはない、平和条約に明記をされておるのは、韓国に属する無数の島のうちのごく一部分であるというようなことを言つております。しかしながら日本側といたしましては、ポツダム宣言を受諾いたしましたときに、ポツダム宣言に引用してありますカイロ宣言を受諾いたしたことになるわけであります。つまり日本近辺の諸小島の帰属は連合国側がきめるぞというような連合国側の主張を、日本側は降伏によつてのんだわけであります。そこで帰属の問題については、平和条約によつて明らかになつたわけであります。平和条約の第二章というのはまさに領域の帰属をさしたものでありまして、これはそういう領域条項の当然の解釈といたしまして、領域条項に掲げられた島、つまり特に敗戦国側から剥奪する領域だけを書くのが当然でありまして、日本側といたしましては、平和条約の領域条項に特に書き出さたれ領域以外は、当然日本に残ると心得てしかるべきである、また連合国側の解釈もそうであろうと思います。なるほど韓国の近い所にはたくさんの島がありまして、それは一々平和条約では申さないでありましよう。しかし平和条約に記載されておる鬱陵島よりももつと日本に近い島を韓国のために取上げるなら、まさに連合国はそれを特記したはずであります。日本側に近い島を特記しなかつたゆえんのものは、連合国側の意思は当然日本に残す意思であると解すのが当然であろうと思います。また韓国側のもう一つのポイントは、米軍は竹島に対する射撃を中止する際に、韓国の国防部に通告して来たということを言つております。これも日本が申しておりますように、あれは日本領であるからこそ合同委員会におきましてわざわざ日本側から地域として提供してもらう措置を米軍がとつて、それで演習地として使用した。やめるときに再び合同委員会にかけまして、そうして日本側に、あれはもう区域として必要なくなつたということを申して来ておるわけであります。ただ昔から韓国人も漁業であの近辺に行つたという事実がありますから、念のために利害関係者として韓国にそういういうことを通和することもあつたでありましようが、それは便宜の問題でありまして、領土権が韓国側にあるからという理由で、米軍が韓国側にも通報したと解釈するのは誤りではないかと思います。このように韓国側があげております根拠は、私どもの目から見ますと、これはどうも、成り立ち得ないのではないかと思います。韓国側はあるいは向うの理由を詳細に将来発表するような機会かあるかもしれませんが、日本側からその全貌を発表することは差控えたいと思います。しかし大体おもなるポイントはただいま申し上げたような点でございます。
(注)
※田中(稔)委員:田中稔男衆議院議員(日本社会党(左派))
※下田説明員:下田武三(条約局長)
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昭和28年11月04日 第017回国会 衆議院 外務委員会 第5号
○川上委員 質問の打合せで二十分ということになつておりますので、私はこの打合せその他はかたく守りたいと思いますが、政府の方でもできるだけ簡単にお答えを願いたい。そうしませんと時間が延びます。
第一番の問題は竹島の問題でありますが、この竹島が今日本にとつて重大な問題になつておる。この竹島は占領中の日本の行政区域になつておらなかつたという事実、これはどういうわけで占領中日本の行政区域になつておらなかつたかということを聞かしてもらいたいのです。
○ 下田政府委員 御承知のように占領開始直後でございましたが、日本国政府の行政権の及ぶ範囲を限定いたしまして、その際に大部分の離れた島々に対しては、日本政府の行政権が及ばないことにいたす旨の指令が出ました。但しその指令に明らかに断つておるのでありますが、これは講和の際に日本国の領土として何が残るかということとは、全然関係のないことであるという断りがついた指令が出た次第であります。
○川上委員 それはよくわかつておるのでありますが、竹島のような島、これは昔から日本の領土であつたと主張しておるのですが、これが特に除かれておつた、つまりこれが領土を最終的に決定するのでないとかあるとかいう問題ではないのです。なぜこれが除かれておつたのかということを聞いておるのです。
○下田政府委員 これは連合軍司令部がどういう意図で除きましたか説明はございませんでしたが、大体竹島と同じくらい距離の離れておるところは、そこに日本政府あるいは日本国民が行くことを許すことは占領政策上おもしろくないという見地から、あのくらい距離の離れた島は、竹島に限らず除いた、そういうように考えるのでございます。
○川上委員 そんなことはありません。ほかのところで除かれておるのはことごとく何らかの理由があるのです。これはわれわれが了承してよいかどうかは別としまして、理由はちやんとある。しかし竹島はどういう理由なのですか。あそこのところにわざわざマッカーサー・ラインがあの上を通つておるにもかかわらず、竹島だけはわざわざ除いてある。そうすれ政府はなぜこれはのけておりますかということを聞いたことがありますか、ありませんか。
○下田政府委員 私どもは聞いてことがあるかどうかという点をつまびらかにいたしておりませんので、当時の記録を調べましてから御返答申し上げたいと思います。
○ 川上委員 条約局長が知らぬというのは聞いたことがない証拠なのです。それほど詳しく知つておる人が知らぬから調べてみるなどと言うのはちよつといけないです。これは何も言つておらぬのです。私は問題の出発点はここにあると思う。なぜこんなことが起るか。しかも平和条約を批准するとき国会に出ておる付属地図というものがある。あの付属地団を見ましても竹島はちやんと除外されてある。別のラインが引いてある。マッカーサー・ラインではありません。別の線がちやんとついておるのです。これはほかのところの行政区域をわけた線と同じ線がついておる。この問題について政府は知らぬ顔をしておつた、こういうことが今明らかになつたと思います。ところが去年の七月二十六日にこの竹島は米軍の演習地として日本が提供する区域に一ぺん加わつたことがあると思うのですが、御記憶があるかどうか、ところがこれに対して韓国から抗議が来ているはずなのだ、というのは韓国の人間が死んだとかいうのですが、韓国はあの島へ上つておつたのですから死ぬのはあたりまえです。そこで抗議が来たところがさつそくこれがリストから除かれて、しかもこの除かれたということをアメリカ当局は韓国へ通告しておる。日本の政府はアメリカ当局に聞いてみたら、韓国に通告したのだという返事が来ておる、こういう答弁を政府はしておる。これは何で韓国へ先に通告しなければならないか、また何でリストからのけたのであるか、私たちがこういうことを聞くわけは、アメリカはこの竹島がどつちのものかということがはつきりしておらぬのじやないか、はつきりした文書か何かあるのか、こういう国際紛争の種を残しておいて、やれ実力を使いそうだとか、断固としてやるとかいうことを言うておる。私はこれはややこしい。この点明らかにしたいために私は質問しておる。どういうぐあいでありましようか。
○小瀧政府委員 竹島がどうして除外されたかということは向う側のことでありますからわかりません。しかし演習地に使つておつたことは事実であつて、そうした軍事的の意味から竹島が除かれたかとも思うのでありますが、しかし昨年の七月の二十六日にわが方に対して施設区域に指定方を申し出たということは、明らに日本の領土であるということを認識しておるからの行為であつたと考えてよろしかろうと存じます。また韓国側へ通知したということについて、議会でそういうことを政府委員が言つたように川上委員はおつしやいますけれども、そうでなくして、そういうことを韓国側が申して参りましたから、これはおかしいというので米軍の司令部へ問い合せましたら、そういうことをしたことはないというので、日本側に対してこれはもう使用しないということをその後申して来ておるわけでありまして、その点に川上委員は誤解があるのではないかというようにそんたくいたします。
○川上委員 竹島を演習区域から除いたということを、アメリカの空軍司令官が通告したことは絶対ありません。
○小瀧政府委員 そういうことは日本側にないということを今言つておりますし、日本側へ現にこれを除くということを通達しておるわけでありますから、双方へそういう通達を出そうはずはないのであります。
○川上委員 朝鮮に通告したということを聞いて、日本が聞き合せて、そうして日本側に通告を受けておるのではないですか。向うから来ている回答はそういう回答と違うのじやないですか。
○ 小瀧政府委員 それは韓国側が日本に対する申出に対して、それも一つの理由だというようなことを言うので、調べたのであります。ところがそういう事実がなかつた。しかもそのあと日本に対してこの施設、区域から除外するということを言つて来た。それは明らかに米国側は日本の領土権を認めたからこそ、この協定にいうところの施設、区域から除くということを言つて来たわけであります。
○川上委員 外務当局は日本の領土だから除くと言つているのですが、韓国から抗議があつたから除いておるのです。韓国から抗議があつたことはわかり切つたことなんです。韓国から抗議があつた、そうしたらそれを除いた、こういうことになつておる。だからあなたの言うのはさかさであつて、アメリカは韓国側だと思つておるから除いた、こういう解釈が成り立つわけです。
○小瀧政府委員 それは違うのでありまして、向うは海軍の演習をもうあそこでやらないから、それじや施設、区域から除こうということを言つて来たのであります。
○ 川上委員 私はこういう問題を言い抜けであいまいにしておいてはいかぬと思う。これは私の言つた通りに韓国から抗議があつて、その時分には韓国の漁民が爆撃のために死んで、そこで韓国がアメリカ当局にこれを申し出て、アメリカ空軍司令官は韓国の抗議によつて日本のリストに入つておつたものをのけて、これを韓国に通告しておるのです。こういう点をやはり明らかにしてやらなければいけない。こうして見るというとこれはさつぱりあいまいである。一体アメリカはこれをどう思うておるのか。ここに李承晩はとりついておるのである。これはわが方の領土であることをアメリカ側は認めておるのだということを主張しておるのである。日本は占領区域から除かれていた時分にも、何一つこのことを交渉していない。また韓国から爆撃の抗議があつたから除いたというが、日本の領土なら日本の領土へ韓国がかつてに入つて来て爆撃の被害を受けたところで、これはしかたがない話だ。日本の領土であるのなら、そこで魚をとつておつて演習のために死んだ、これは向うさんがかつてに死んだのであつて、このために抗議なんか成立するはずはない。ところがその抗議によつてこの竹島をリストから除いたということは、アメリカが向うのものだと思つたから除いた、こういう解釈が成り立つわけです。こういう非常に疑問のあるところを残しておいて、そうして断固たる処置をとるか、あるいは場合によつては、武力も使いかねぬような口実を言つておるが、こういうことを言つておると時間がないから私はたくさん論議はしないが、これはまつたくアメリカの、アジア人とアジア人を戦わせるというからくりにすつかりひつかかつておる。同時に日本の中ではこういうことを利用して、再軍備、軍国主義復活熱をあおり立てる材料にしておる。初めからこれはあいまいな形で残つておる。こういう形の平和条約を批准してある。第一にこの平和条約の批准の時分に出したあの地図、あとで政府は急いで取消しておりますけれども、あの地図には、日本領域参考図と書いてある。領域と書いてある。この地図の中にはちやんと竹島はのけてある。ところがこれは参議院の委員会には出ておらぬ。衆議院には出ておるのです。半分しか出てない。それなら何であの日本領域参考図というものを出したり引込めたりしたんです。これは明らかにはつきりしていない。私は、政府はアメリカがはつきりしておらぬぞということを言つた方がほんとうだと思う。だから緒方副総理は労農党の質問に対して、平和条約によつて竹島はわが領土でありますと答えていない。国際法によつてわが領土でありますと答えた。何でこんなことを言う。平和条約でちやんときまつたのなら、そう答えたつていいじやないか。私はこれ以上議論しませんが、この問題は簡単な問題じやない。こういうことをしておいたのは政府の責任じやないか。重大な手落ちなんじやないか。こういう種をまいているじやないか。こうしておいて李承晩に物を与え、そしてアメリカさんはこれを利用して、アジア人とアジア人とを食い合せることをちやんとやつてござる。吉田政府はこれを活用して再軍備の熱をあおり立てておる、こう言われてもしかたのない根をちやんと残しておるじやないか、私はこう思うのです。しかしこれはこれ以上問題にしましても、おそらくここで議論を闘わせるだけになるだろうから、この点を明らかにしなさらなければ、アメリカははつきりしたことを一ぺんも言つたことはありませんよということを一つ言つておきたい。また日本の政府は、平和条約の上でこれは日本の頗土でありますということを、はつきり証明する材料を出さなければいけないのに、今まで出しておりません。このことを私はここにはつきり警告しておきたいと思う。もしもこの委員会を今後、明日あるいは明後日開かれれば、この問題についてはさらに私は材料をもつて政府の考え方を聞きたい。きようは何しろ時間が制限されていて、この約束を守りたいから私はこの問題はこらだけで打切つておきます。
(注)
※川上貫一:衆議院議員(日本共産党)
※小瀧政府委員:小滝彬(外務政務次官)
Kaneganeseさん、
ReplyDelete引用された東亜日報の翻訳は、大部分がmatsuさんが判読されたものです。それと、『独島』以外の「」は全てはずしてください。「」は、その時点で新たに判読した文字を示したものです。
2009.1.3
chaamieyさん
ReplyDeleteご指摘有難うございます。早速修正します。
国会議事録検索システム上の各記事へのリンクを追加し、タイトルも変更しました。もしリンク間違いなど発見されましたら、ご連絡下さい。
ReplyDeleteメールやコメント欄での皆さんの意見を元に戦後の竹島問題に関する必要資料リストを作っています。ご意見あれば、お願い致します。(鄭秉峻氏の論文に載っている一次資料はどれも読んでみたいものばかりですけれど。)
ReplyDelete鄭秉峻「 解放後韓国の独島に対する認識と政策(1945-51) 」(2008) から、
①1947年7月23日以前に竹島に日本人が行って韓国人に退去を勧告したという事例を確認できる日本側の資料
1947年7月23日『東亜日報』に「版図に野欲の触手放棄できぬ日人の侵略性、鬱陵島近海独島問題再燃」
日本の島根県境市の日人が同島は自分たち個人のものであると朝鮮人の漁業を禁じており、さらに日人はわれわれの領海に侵入しており、鬱陵島島民たちは慶北道の軍政当局に陳情に行った。
1947. 8. 13. ≪한성일보≫
倭人たちはマッカーサーラインを超えて鬱陵島から48マイル、日本から128マイル離れている我が国土独島まで警官・医師等まで加わった倭人7、8名が上陸占拠し、あるいは済州島付近に現れ朝鮮の漁場をかく乱・侵害する等悪巧みを抱いて不法行為を敢行していることから農務部水産局では軍政長官を通して再び我が国の漁業地区を侵犯できないようマッカーサー司令部に要請する漁業区域縮小案(北緯40度東経135度 - 北緯26度東経113度 -北緯26度東経123度)を提出したが、その結果予想以上の注目を集め、そのうえ日本人が上陸占拠した独島も地理的・歴史的に見れば当然わが国土の一部であることに違いはなく、わが民族の独島に対する関心は絶対(文字不明)マッカーサー司令部の善処が切実に望まれている。
②USAFIK, United States Army Military Government in Korea, South Korea Interim Government Activities, no.23, August 1947, prepared by National Economic Board and Statistical Research Division, Office of Administration
「ここで米軍政当局は独島がすぐれた漁業前進基地として鬱陵島南西側(原文のまま)に位置する2つの小島から成っており、現在領有権が論争の的となっていると書いている。即ち過去においては日本の占領
下にあったが、現在はマッカーサーラインにより韓国側の漁業区域に確定されており、この島の終局的な帰属問題は日々迫りつつある対日平和会談において決定される問題であるとまとめている。」
その他の文献から
③(昭和二十八年=1953年)三月四日、米国側は、竹島に対する韓国の領有権を承認した事実はないと発表している。(田村清三郎『島根県竹島の新研究』, p118)→ 一次資料
④(韓国は)竹島の交渉に際して、「竹島を日本人がリアンクール島というのは、東島にある大きな岩窟を李朝時代に李安窟と呼んだから出た名前であると思われる」などというでたらめを恥知らずにも主張したことを覚えておきたい。(田村清三郎『島根県竹島の新研究』, p143)→ 一次資料
⑤内藤正中氏『竹島=独島問題入門』(p53)戦後の竹島爆撃演習についてに「1953年3月19日韓米合同委員会の決定で指定が解除される」としているが、韓国人学者の著作を見てもこの合同委員会に触れたものはない。→ 関連情報と一次資料
Kaneganeseさん
ReplyDeleteありかとうございます。
この国会資料は、大変面白い資料だと思います。
それにしても、1953年2月27日に、アメリカから韓国に対して、
誰によって、どういう形で、誰に対して、何が、伝えられたのか。
その記録が、どういう形で残されているのか。
それを韓国側はどう受け取り、どう(歪曲して)発表したのか。
発表したものの記録はあるのか。
このことは、
「アメリカ政府が、獨島は韓国の領土の一部であることを認定した」という形で、今に至るまでも主張されていることがらだけに、きっちりと検証する必要があると思います。
さしあたり提示されているのは、「二月二十八日の毎日新聞」とありますが、
双方の新聞の記録がまだほかにあるのではないかと思います。
また、Kaneganeseさんの上のコメントにある
③(昭和二十八年=1953年)三月四日、米国側は、竹島に対する韓国の領有権を承認した事実はないと発表している。(田村清三郎『島根県竹島の新研究』, p118)
という一次史料を見たいものです。
なお、この2月28日の東亜日報の翻訳は、まだ確定訳ではありません。
原文が非常に見にくいこともあり、ほかの資料によってさらに確認する必要があると思います。
この件を追うのには、ロヴモ Mark S. Lovmo氏のサイトにのっている資料と彼のコメントをしっかりと了解する必要があるようです。長い英文で大変ですが。
ReplyDeleteとくに、このページです。
http://dokdo-research.com/page9.html
ロヴモ氏の研究によれば、1953年2月27日の、独島が韓国領土であることを認定するという「ウェイランドの書簡」なるものは、存在しなかった、ということになります。
(上の国会論議では「ウエンライト米極東空軍司令官」となっているようです。)
上記サイトの
3/3/53:にのっているロヴモ氏の赤い字のコメント。
The State Department would later look into the allegation that Weyland wrote such a letter and would conclude (by March 12) that he did not do so, nor was any such letter sent to the ROK Defense Ministry.
(訳)
国務省は、後にウェイランドがそうした手紙を書いたという主張について調査した結果、彼が手紙を書いたという事実も無く、韓国国防省あてに送られたいかなる手紙も存在しないという結論に(3月12日までには)至ることになったのである。
このロヴモ氏の研究がいつ公開されたのか知りませんが、これが正しいとすると、
前回私が
http://dokdo-or-takeshima.blogspot.com/2009/12/blog-post.html
のコメントで引用した、
愼鏞廈『史的解明 独島(竹島)』韓誠訳1997・6・6刊 インター出版
206p
独島が米・日合同委員会によって米空軍の演習基地に決まったという風聞に大韓民国政府から抗議を受けた米空軍司令官は、1953年2月27日付けで独島を空軍の演習基地から除外するという公式書簡を発表した。(注4)
(注4)往復文書 1953年9月9日付 韓国側口述書 資料集39~40p
ここで愼鏞廈のいう「公式書簡」は、存在しない嘘っぱちであることになります。
matsuさんご指摘の
ReplyDelete愼鏞廈『史的解明 独島(竹島)』韓誠訳1997・6・6刊 インター出版
206p
独島が米・日合同委員会によって米空軍の演習基地に決まったという風聞に大韓民国政府から抗議を受けた米空軍司令官は、1953年2月27日付けで独島を空軍の演習基地から除外するという公式書簡を発表した。(注4)
(注4)往復文書 1953年9月9日付 韓国側口述書 資料集39~40p
の(注4)の資料をみると、
p39
...
VIII. In the last part of the Japanese Government's views on Dokdo, it is stated that "Takeshima has been designated as one of the maneuver grounds for the U.S. security forces...", that "a sub-committee of the Joint Commitee of the United States and Japan decided upon the exclusion
p40
of Takeshima from the maneuver grounds on May 19, 1953..." and that the Japanese Government considers such measures have been taken "on the premises that Dokdo is a part of Japanese territory."
However, such premise is based on nothing but an interpretation entartained by the Japanese Government. The Japanese Government, on the contrary, should realize the fact that the Commanding General of the U.S. air forces officially notified the Government of the Republic of Korea that Dokdo was to be excluded from the designated maneuver grounds for the U.S. air force on February 27, 1953 in response to a protest lodged by the Government of the Republic of Korea.
...
となっていますね。
「公式に忠告した」と書いていますが、「公式書簡を発表した。」とは書いていません。韓国語ではどうなっているんでしょうか? どちらにせよ、これは大きな間違いですね。
1953年代の朝日新聞の縮刷版が近くの図書館で読めるようなので、明日以降見に行ってきます。毎日新聞は、これからの課題ですね。
Kaneganeseさん
ReplyDelete前回も引用しましたが、
愼鏞廈『史的解明 独島(竹島)』韓誠訳1997・6・6刊 インター出版
(注4)往復文書 1953年9月9日付 韓国側口述書 資料集39~40p
に続けて
田村清三郎『島根県竹島の新研究』島根県総務課1965年には
「1953年9月9日付 韓国側口述書=韓国政府反駁声明」の翻訳、があります。
150p(八)
独島に対する声明の末尾で、日本政府は、「竹島は米駐留軍の演習地の一つとして選定されており、・・・日米合同委員会分科委員会は、昭和二十八年三月十九日竹島を演習地から除外することに決定した、云々」そして日本政府は独島が日本領土の一部であるという前提のもとにかかる処置のとられたものと了解する旨のべている。しかしながら、かかる前提は、全く日本政府によってなされた解釈であって何等根拠を有するものではない。反対に、日本政府は韓国政府が申し立てた抗議に対する回答として、昭和二十八年二月二十七日独島を米空軍が選定した演習場から除外する旨韓国政府に対し米空軍司令官から公式に通告をうけた事実を了解すべきである。
確かにここには「公式に通告をうけた」となっていて、「公式書簡」とは書いてありません。
あるいは口頭のものだったのかもしれません。
Lovmoの研究では、「彼(ウェイランド)が手紙を書いたという事実も無く、韓国国防省あてに送られたいかなる手紙も存在しない」とあります。
金学俊『独島/竹島 韓国の論理』論創社2004では、
「アメリカは1953年2月27日にこの島を米軍の演習区域から除くと発表したため」という言い方になっています。
ここに韓国側の「歪曲」の余地があったのではないでしょうか。
いずれにしても、愼鏞廈は前記著書で「公式書簡」と書いているのですが、これは嘘だということになります。
「昭和28年03月05日 第015回国会 参議院 外務・法務委員会連合審査会 第1号」 ででてきた毎日新聞の記事をアップロードしましたので、以下でご覧下さい。
ReplyDelete毎日新聞昭和28年2月28日付記事「竹島領有を確認 韓国国防部で声明」
「韓国領有権を確認した」とあるわりには内容は「ウェインランド米極東空軍司令官は今後同島周辺で米軍機は爆撃演習を行わないことになったと韓国政府に通告した。」だけのようですね。SCAPIN677で連合軍が竹島を日本の領土外に規定したと拡大解釈してしまうお国柄ですから、こんなトンデモ声明が国防部からあってもおかしくは無いかもしれません。今の北朝鮮と同じ我田引水的解釈です。
軍の司令官が竹島の周辺で爆撃演習はしないと言ったというだけですね。彼には領域主権を云々する資格はありません。したがって韓国の領有声明は何ら法的拘束力を持ちませんし、それどころか根拠の捏造までやっていた実態が明らかにされています。「国際法上も韓国の固有領土」という割には根拠薄弱ですね。
ReplyDeleteそれなのに占拠され続けている。これは日本の対応に問題があるように思います。教科書にも「竹島は日本の領土」と明記すべきですし、韓国の主張のどこが誤っているかも明記すべきと思います。
韓国が抗議したからこそ米軍は爆撃演習を止めることにした、というわけなので、韓国が「米国は独島を韓国領土と認めた」というのは至極当然のことなんでしょうね。
ReplyDeleteこのときのアメリカは、内心では竹島/独島は日本領だと思っていたとしても、現実に韓国が竹島/独島を実力で占拠して韓国漁民が利用している以上、爆撃演習を継続することは、日韓対立の中で明確に日本の立場を支持する結果となってしまうので、さすがにそういうことはできなかったでしょう。
2010.01.05
chaamiey さん
ReplyDelete独島義勇隊が竹島に入ったのは、この年の4月が最初だったと思います。漁民が出漁するようなことはあっても、2月の時点ではまだ占拠というような状況にはなっていなかったのではないでしょうか。日韓で口上書の応酬を繰り返していた時期ではありますが。
韓国が抗議したからこそ米軍は爆撃演習を止めることにしたとの思いが、「米国は独島を韓国領土と認めた」という認識に転化したということはあるかもしれませんが、法的には無意味だと思います。日本の外交当局が大騒ぎしなかったのも国際法上の根拠足りえないと見たのでしょうが、その判断は間違っていないと思います。
「爆撃演習を継続することは、日韓対立の中で明確に日本の立場を支持する結果となってしまうので、さすがにそういうことはできなかったでしょう。」とのことですが、米国の立場は極めて明確ですよ。「竹島は日本領」という立場を貫いています。ただ、仲裁役になることは避けようとしていますね。どんな結論を出そうが怨まれかねない損な役回りですからそれは理解できるのですが、ラスク書簡の存在を日本に伝えなかったのは理解しがたいですね。紛争に巻き込まれたくなかったのでしょうが、過剰反応だったのではないでしょうか。歴史にifはないと言いますが、もしこの時、日本がラスク書簡のことを知っていたならば後の展開は大きく変わったでしょうね。(いや、変わらないのかな。存在が明らかになっているのに韓国の不法占拠は続いていますから。)
2010.1.5
This comment has been removed by the author.
ReplyDeleteKaneganeseさん
ReplyDeleteさっそくのすばやい対応、ありがとうございました。
毎日新聞 昭和28年2月28日
釜山二十七日発 UP特約
韓国国防部は二十七日、米国は日本沿岸から二百四十キロの海上にある独島(日本名竹島)の韓国領有権を確認したと声明した。なお同発表によれば同島は今まで日韓両国でその領有を主張して来たもので、同島付近の米軍機の爆撃演習でこの数年間に数名の漁民が殺傷されたことがあるが、ウェイランド米極東空軍司令官は今後同島周辺で米軍機は爆撃演習を行わないことになったと韓国政府に通告した。
これで、「ウェイランド米極東空軍司令官は今後同島周辺で米軍機は爆撃演習を行わないことになったと韓国政府に通告した」ということだけが「事実」なのであっで、
この「通告」を、韓国側が勝手に解釈して、(ということは、すなわち「歪曲」して、)
「米国は・・・独島(日本名竹島)の韓国領有権を確認した」という
とても身勝手な「発表」をしたことが、文献で証拠づけられたと思います。
記事のアタマに、UP特約、とありますので、もとは英語で、世界各地に発信されたのではないでしょうか。
UP United Press 米国の通信社。1907年創立。現在のUPI。
UPI通信(United Press International)
アメリカの国際通信社。1907年に設立されたUPと1909年に設立されたINSが1958年に に合併して設立。
ま、日本とアメリカ以外の国は、特に関心もなかったでしょうから、紙面には載せた国は少なかったでしょうが。
これにより、
自分に都合の良い資料だけを、自分の都合の良いように勝手に解釈して、それを摂取して、いよいよもって肥大化していく、「独島教」というモンスターが、またまた大きく育ったのだと思います。
makotoさん、一連のやりとりが領土問題に関して無意味だというのは、私もそう思っていますよ。米軍は「もう竹島では演習をしない」と決めただけのことですからね。
ReplyDelete>ラスク書簡の存在を日本に伝えなかったのは理解しがたい
日本に伝えたならば、日本は当然に「アメリカがこう言っているぞ」と韓国に言うことになったでしょうから、結局、アメリカが審判者になってしまいます。それはいやだったのでしょう。
2010.01.06
GTOMRさんの資料翻訳1件アップ
ReplyDelete独島問題は韓日政治会談の議題たり得ず
東亜日報社説 1962年3月6日
独島問題は韓日政治会談の議題たり得ず
東亜日報社説 1962年3月6日
先月21日、池田日本首相と会談した金鐘泌中央情報部長は、帰国後先月3日の記者会見において前記会談の内容を公開した。金部長が発表したところによれば、彼と池田首相は高位政治会談の必要性に合意を見、3月中に東京において、まず外相級程度の会談を開催し、相互間の意見を接近させた後、首脳会談においては調印のみを行うこととするというものだ。
その後、我が政府においては韓日政治会談に出席する我々側代表の人選に着手しており、一方、同会談に必要な手順に関しては、現在、裵駐日大使と日本政府当局者間で連日協議していることが分かった。そして、前記外相級会談においては8項目の財産請求権に表示された額数修正と漁撈協定締結問題がその焦点となるだろうというのが外交消息筋の展望だ。そうして、韓日間の早速の国交正常化のために努力している政府はもちろん、国民も予想される政治会談に期待しているのが事実だ。
ところが、昨日5日、東京から伝えられた外信によれば、日本政府は前記韓日政治会談の開催を前に、独島問題をその議題に挙げようとしてこれに必要な文書を作成し、日本はこの文書を韓日会談において韓国側に提示する予定だという。
我々は、このような外信報道が事実ではないことを願うところであるが、もしこれが事実であるならば、日本側のそのような術策は誠に遺憾なことと言わざるを得ない。
これまで韓日会談が十余年をかけてずるずると引き延ばされても解決されずにいる原因は、単純なものではない。しかし、少なくとも、最近の状況だけを見るならば、我が革命政府は韓日会談の早急な妥結のために前例のないほどの誠意をもって努力しているのが事実だ。それにも拘らず韓日会談が成功できずにいるのは、主に日本側の誠意不足と解決すべき問題の困難性に基因するものだ。
ところが、日本政府は、このたび独島問題まで韓日会談の議題にしようと策動しているが、これは韓日会談を成功させようという意図が日本側にあるのか疑わせるできごとだ。現在解決すべき問題だけでも韓日会談を成功させるためには双方の限りない努力が必要なのに、その上に新しい問題まで提起するというわけだ。
のみならず、独島は韓日間に「問題」になることのできない厳然たる韓国領土であるのだ。日本側は独島問題を前記会談において取引の代価とする心算なのかも知れないが、韓国領土の一部を韓日交渉の対象とするということは到底容納できないことだ。「自分のものは自分のもので、相手のものは外交取引の対象になる」という式の外交が通じると考えているのならば、それは日本のためにも不幸なことでないはずがない。
我々は、既に本欄を通じて何度も強調してきたところだが、日本政府が浅知恵を弄することなく、大局的見地から韓日国交正常化を早急に実現させようという韓国側の誠意に呼応してくれることを今一度要請するところだ。
2010.01.06
chaamieyさん
ReplyDelete翻訳、有難うございます。
"軍は「もう竹島では演習をしない」と決めただけのことですからね。"
そうなんですよね。韓国の国防軍がそれを拡大解釈して米国が韓国領だと認めた、と誤って宣言した、そして日本政府もそう解釈して大騒ぎしなかったというのがやはり真実のようですね。でも暴走系のシンヨンハさん以外はその失敗に気がついて、その後微妙に修正するか隠蔽するかしているようなので、そこは突っ込みどころとして面白いところですね。ウェイランドの発言や韓国大使館からの伝達など、もう少し一次資料を集めたいものです。
不明文字判読
ReplyDelete冒頭の東亜日報の翻訳のうち●で残っていた部分は、「今後は」でまちがいありません。
2010.01.08
翻訳1件アップ
ReplyDelete島嶼巡礼
鬱陵島方面(5) 第七隊 李吉用
島嶼巡礼
鬱陵島方面(5) 第七隊 李吉用
所属抗争百年に近く 朝鮮領土に帰着
朝鮮、日本、明 三国の間で変遷多き鬱陵島
1928年9月5日 東亜日報
(翻訳未完)
太守の驕策も水泡に
長崎から対馬護送
「自分の国の土地で魚を採って何が悪いか」と抗拒した安龍福を護送することになった伯耆州太守は金を贈り厚遇したが、安龍福はこれを全て拒絶し、鬱陵島○○○○○○○だと○○○○○のような抗議をした。太守はどうすることもできず、幕府にこの件を報告した後、その命によって、鬱陵島との関係を良く知っている対馬宗家と親交のある長崎に護送したが、そこに行ってもやはりしきりに反抗するので、再び対馬島に護送した。
最後の脅威にも決死の反駁
この島からあちらへ、あちらからこの島へと行き来した安龍福に、対馬島太守は「鬱陵島は日本の領土だと幕府の指示があるのに、おまえは何を言うのか」と最後には脅迫したが、安は○○○不当な主張に反駁し、さらに○○道理がなく、太守平義信は朝鮮の礼曹(外交担当部署)に公文を送り、朝鮮漁民安・朴(朴は同行していた人物)2名が来ることのできない竹島(当時、日本では鬱陵島を竹島と呼んだ)に40余名を伴って密漁○○したこと○拘禁した後、いくら説諭しても聞かないので処置せよと言った。
抗争80余年 朝鮮領土に帰着
鬱陵島を間に置いて78年続いてきた領土問題を再び繰り返して、以来数年間、互いに自分のものだとしたが、粛宗22年(今から133年前)に至り、鬱陵島は朝鮮の領土ということを日本側においても承認し、直ちにこの島の移民渡航を禁止したが、80年をおいて公然と扱われた鬱陵島は再び○住人を探すこととなった。その後からは注意を払って取締りをし、政府では三年ごとに○○○○張漢相を始めこの島に日本人がいるかいないかの調査として使臣を送ることとなったが、この島は四度めの無人島の運命となった。
開拓令が出る際に再び所属問題惹起
そうこうするうちに180余年を経て、開国192年(46年前)に観察使李圭遠がこの島を視察して帰還し、この島は山岳のみで平野がないが多少は耕作が可能で、また海産物が少ないではないので、この島の○○○を開き百姓を住まわせるのが良いと 報告してきた。しかし、いつの間にか再び 日本人が入って来て伐木と漁撈をむやみにする者が多く、三度めの所属問題が起きたが、金玉均らの熱烈な主張により問題なく韓国政府の所属が確認され、日本人の渡航を改めて禁止し、45年前に鬱陵島開拓令が発布された。
風霜千有余年 新展開の鬱陵島
東海滄浪の寂しい島として歴史に書かれたことだけ見ても、人が住めども海賊が○○するや無人島になってしまい、海賊を○○すれば日本人が入って来て、海賊の根拠地から無人島へ、無人島から国際問題へ、このような風霜を何度も繰り返して来た鬱陵島の最近は、およそ45年前からを始めとする新しい営みの島だ。開拓令が発布され移民を許可した甲申の年に、江原道蔚珍郡、慶北慶州郡、長○郡、慈仁郡、慶山郡、清道郡、永川郡、慶南蔚山郡、彦陽郡、密陽郡などから続々集まっている。
大きな主人を探したが小さな主人も問題
人々が安心して住むようになってから、この島に始めは島長を置き、28年前に江原道鬱陵郡と名付け、隆煕元年に慶尚南道管轄と改めたが、日韓合併以後にこの管轄を慶尚北道に移管して今日に至るが、大きな主人を求めたこの島の運命は、その次に小さな主人が何回も代わり、○○○○○奇遇な身の上を強く感じた。
2010.01.08
chaamieyさん
ReplyDelete”冒頭の東亜日報の翻訳のうち●で残っていた部分は、「今後は」でまちがいありません。”
さすが、としか言いようがありません。本当に有難うございます。
島嶼巡礼 鬱陵島方面(5) 第七隊 李吉用(1928年9月5日 東亜日報)
の翻訳も有難うございました。領土問題がこれだけ深く掘り下げられておきながら、独島のことが一言も述べられていません。
確かに、竹島/独島のことは出てきませんね。念のために書いておきますが、翻訳できていない「安龍福はこれを全て拒絶し、鬱陵島○○○○○○○だと○○○○○のような抗議をした。」という部分にも、独島とか松島とか于山島とかいうものは出ていません。
ReplyDelete2010.01.09
"開拓令が発布され移民を許可した甲申の年に、江原道蔚珍郡、慶北慶州郡、長○郡、慈仁郡、慶山郡、清道郡、永川郡、慶南蔚山郡、彦陽郡、密陽郡などから続々集まっている。"
ReplyDelete「欝陵島に入植した全羅道漁民の方言では、独島のトクと石島のトルの発音が近いので、石島は独島だ」と主張していたかと思いますが、全羅道は記録されていないのでしょうか。
入植者の名簿のようなものが発見されて調べてみたら、本当に全羅道からの入植者はいなかったりして。
2010.1.8
全羅道は書いてないですが、「など」から続々集まっている、となっていますね。
ReplyDelete2010.01.09
Chaamieyさん
ReplyDelete不明文字判読
冒頭の東亜日報の翻訳のうち●で残っていた部分は、「今後は」でまちがいありません。2010.01.08
ありがとうございました。
このところちょっと忙しくて反応が遅くなりました。
意味としては、これで確定して良いのだと思います。
改めて読み直して見ましたが、ハングルで確定できない文字があるので教えてください。
一時期、『獨島』の「住民(周辺?)」を恐怖の中におとしいれていた『獨島』周辺攻撃演習は、韓国と国連軍当局との合意で、隣接する住民達の不安を一掃することになったという。昨二十七日、軍当局が発表したところによれば、去る九月十五日、国籍不明の飛行機の爆撃事件以来問題であった独島は、その間我が政府と国連軍当局間に完全合意を見て、アメリカ政府としても獨島は韓国の領土の一部であることを認定し、今後、獨島付近には爆撃がないことを米極東総司令官により保障されたとして、爆撃により大打撃を受けてきた漁民達も、今後は安心して漁労に従事できるようになったという。
한동안『독도』주민(주변?)을 공포 속에 ●●하던 『독도』주변공격연습은
한국및 UN군당국과의 합의로 이웃주민들의 불안을 일소케하였다고 한다.
작廿七일 군당국이 발표한 바에 의하면
지난 九월십五일 국적불명의 비행기의 폭격 사건 이래 문제●이던 독도는
그간 아정부와 UN군당국간에 완전합의를 보았으며
미국정부로서도 독도는 한국의영토의一부임을 인정하고
금후독도부근에는 폭격이 없을것이 미극동총사령관에의하여 보장되었다하며
폭격으로 인하여 대타격을 받아오던 어민들도
●후●는 안심하고어로에 종사할수 있게 되였다한다.
冒頭は「漁民」ではないように思います。
「住民」とすると、独島に人が住んでいる、と当時の東亜日報の記者は考えていたのでしょうか?
2010.01.10
塚本論文p80に触れられている半月城通信です。
ReplyDeletehttp://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/takeshima04/takeshima04_01/index.data/09.pdf
80p
ここに「リアンクール岩に韓国人Koreans on Liancourt Rocks」(または「リアンコールト岩の韓国人」)の日本語訳があります。
http://www.han.org/a/half-moon/hm111.html#No.822
塚本氏の論文に明瞭なように、この半月城氏の主張は、完全に論破されています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
半月城通信 No.111(2005.6.1)
目次 12 竹島=独島と駐日アメリカ大使館
竹島=独島と駐日アメリカ大使館
2005/ 5/22
Yahoo!掲示板「竹島」#9494
半月城です。
RE:9455
kwsk_myさん、最近マーク・ロブモ氏により発見された重要な資料の紹介および翻訳
をありがとうございました。しかし、翻訳は機械翻訳のため意味が通じにくいのが難点で
す。これを私なりに翻訳してみました。文末に掲げます(注1)。
この資料の価値ですが、サンフランシスコ講和条約前後、竹島=独島問題で迷走を繰
りかえしたアメリカの最終見解を知るのに貴重な資料です。
この文書で特に重要なのは、アメリカが何回か竹島=独島問題を検討した結果、1952
年10月の時点で、リアンコールト岩(竹島=独島)は「ある時期に朝鮮王朝の一部であっ
た」という結論を出したことです。
この結論は、ラスク国務次官補の書簡(1951.8.10)と明らかに矛盾します。同書簡は
駐米韓国大使宛てにこう記しました。
--------------------
独島、又は竹島ないしリアンクール岩として知られている島に関しては、この通常無
人である岩島は、我々の情報によれば朝鮮の一部として扱われたことが一度もなく、1905
年ごろから日本の島根県隠岐支庁の管轄下にあります。この島は、かつて朝鮮によって領
土主張がなされたとは思われません。
--------------------
この書簡の一年後に、上記のように竹島=独島は「朝鮮王朝の一部だった」と結論を
だしたのはナゾです。考えられるのは、竹島=独島問題に熟知していないアメリカがまた
もや猫の目のように見解を変えた可能性です。
そうでないとしたら、アメリカは政治的意図をもって韓国へ冷たい書簡を送ったのか
も知れません。日本政府顧問のシーボルトは1949年にアメリカ国務省へ同島の軍事的価値
を強調しましたが(注3)、アメリカはそれを考慮し、同島を日米安保協定下で軍事利用
した方がベターと考え、韓国大使にはつれなく回答したのかもしれません。
いずれにしても、イギリスのみならずアメリカも竹島=独島は朝鮮王朝の一部であっ
たとの結論を出した事実は、今後の領有権論争に大きな影響を与えそうです。
(注1)<駐日アメリカ大使館の秘密資料>
ロブモ氏HP<Memo #659, American Embassy to State Department>
秘密(解除)
発信:アメリカ大使館・東京 659
受信:国務省、ワシントン 1952.10.3
件名:リアンコールト岩の韓国人
韓国と日本の間で相次ぐ利害関係の衝突により、両国関係が悪化している。最近、発
生したある事件は、今後より大きな問題に発展しかねない。また、アメリカへ少なからぬ
影響を与えかねない。その事件と言うのはリアンコールト岩(独島)をめぐる領土紛争で
あり、日本と韓国の間で領有権をめぐる紛争である。
国務省はリアンコールト岩の歴史をすでに数回も検討したことがあるが、それをここ
で詳述する必要はない。その岩はアザラシの繁殖地であり、ある時期、朝鮮王朝の一部で
あった。その岩は、日本がその帝国を朝鮮に拡張した時、もちろん朝鮮の残りの領土とと
もに併合された。
しかしながら日本政府は、帝国支配の過程においてこの領域を日本の本土に編入し、
ある県の行政下においた。
そのため、日本が平和条約の第2章で「済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対す
るすべての権利、権原及び請求権」を放棄することに同意した時、条約の起草者はこの岩
を放棄すべき領域に含めなかった。
日本は、リアンコールト岩に対する日本の領有権は理由のあることとしている。それ
に韓国が異議を唱えているのは明白な根拠にもとづくものである。
この岩は韓国と日本の間にある日本海の公海上にあり、国連軍の航空機にとって北朝
鮮での爆撃から戻る際に有用である。この岩は、投下目的地で使用されなかった爆弾を落
とせるレーダー照準点として使うことができる。
リアンコールト岩は無人島で、しかも航路の目印になるので、実際の爆撃の標的とし
て理想的である。そのため、日米安全保障協定にもとづく合同委員会による作戦区域の選
定において、この岩は上記の目的に役立ち、日本政府により施設として指定されることが
合意される。
その岩は爆撃目標になっており、危険区域として宣言され、週7日、24時間のベー
スで立ち入り禁止区域として知らされている。
この効果に関する情報は、極東司令部やおそらく極東空軍および海軍・極東の下部組
織をつうじて配布された。つい最近、情報は真珠湾にある太平洋艦隊の最高司令官に流さ
れた。水兵への通達、あるいは hydropacの形で事務的に配布できるようにするためであ
る。
(注2)Foreign Relations of the United States, 1951,Vol4
(注3)半月城通信<愼鏞廈教授の独島百問百答(5)、Q92(シーボルトのロビー活動)>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前掲、塚本論文に明瞭なように、この半月城氏の主張は、完全に論破されています。
81p
以上のことから、論者(Matsu注:半月城氏)の主張とは逆に、米国政府としては1951年8月当時の立場(Matsu注:1951年8月10日のラスク書簡にいう、独島は日本領土であって韓国領土ではない、というアメリカ政府の認識を示す立場)を再確認したことが資料的に明らかになっている。
なお、半月城氏は上記の「半月城通信」で、愼鏞廈教授の独島百問百答(5)、のQ92(シーボルトのロビー活動)を注記していますが、むしろこの事件に直接関係があるのは、Q89.(米軍演習場)だと思います。
ReplyDeletehttp://www.han.org/a/half-moon/hm104.html#No.760
愼鏞廈教授の独島百問百答
Q89.(米軍演習場)
このころ、米軍が「独島」を米空軍の演習場として使用したが、鬱陵島漁
夫を多数爆死させたことがあり、日本側は米空軍が独島を日本領と見なしたた
めに米空軍演習場として使用したものであると主張したが、そのような事実が
あるのか?
ANS.
大韓民国政府が樹立される直前である1948年6月30日、アメリカ空軍機が
独島周辺で爆撃演習を実施したが、独島に出漁中であった韓国漁民30余名が犠
牲になる不祥事があった。
しかるに、この時期は独島を含め韓半島が駐韓米軍政統治下にあったので
あり、決してこの事実が独島を日本領と見なしたとする傍証になるのではない。
日本側の主張はまったく不当なものである。
大韓民国は、政府樹立後である1950年4月25日、アメリカ第5空軍にこれを
照会、抗議した。アメリカ第5空軍から同年5月4日付で「当時、独島とその近
辺における出漁が禁止された事実はなく、また独島は極東空軍の演習目標に
なっていなかった」という要旨の回答を受けとった。
その後、韓国戦争期間中に独島が米・日合同委員会によりアメリカ空軍の
演習基地に選定されたという情報が韓国に入った。
大韓民国政府は米空軍へこれに抗議したが、米国空軍司令官は1953年2月
27日付で「独島」はアメリカ空軍の演習地から除外されたという公式回答を大
韓民国政府に送ってきた。
このような事実は、大韓民国政府が樹立した1948年8月15日以後「独島」
に対して主権を行使してアメリカ空軍司令部と抗議文書を交換したのであり、
アメリカ空軍司令部も「独島」を韓国領として認定してそれに回答し、承服し
たことをよく示すものである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まず、1948年の事件は、6月8日が正しいと思いますが、韓国側の資料では6月30日と出てくることが多いです。これは間違いだと思います。
それはさておき、ここでは
「米国空軍司令官は1953年2月27日付で「独島」はアメリカ空軍の演習地から除外されたという公式回答を大韓民国政府に送ってきた。」
と「公式回答」となっており、愼鏞廈氏は「公式書簡」説は撤回しているようです。
しかし、それがどうして
「このような事実は、大韓民国政府が樹立した1948年8月15日以後「独島」に対して主権を行使してアメリカ空軍司令部と抗議文書を交換したのであり、アメリカ空軍司令部も「独島」を韓国領として認定してそれに回答し、承服したことをよく示すものである。」
という解釈を愼鏞廈氏に可能にするのか、全く理解できません。
1948年6月、1952年9月の事件ともに、被害を受けたのが韓国人だったから、アメリカは韓国側に回答しただけであり、主権や領土問題とは一切関係がないのではないでしょうか。
matsuさん、
ReplyDelete冒頭は「周辺」でしょう。「おとしいれていた」は「뺄게하던」、「今後は」は「차후로는」ですね。「問題」の次の一文字は分かりません。
2010.01.10
Chaamiey さん
ReplyDeleteありがとうございます。
それでは、とりあえずの決定稿、ということで
一時期『獨島』周辺を恐怖の中におとしいれていた『獨島』周辺攻撃演習は、韓国と国連軍当局との合意で、隣接する住民達の不安を一掃することになったという。
昨二十七日、軍当局が発表したところによれば、去る九月十五日、国籍不明の飛行機の爆撃事件以来問題であった独島は、その間我が政府と国連軍当局間に完全合意を見て、アメリカ政府としても獨島は韓国の領土の一部であることを認定し、今後、獨島付近には爆撃がないことを米極東総司令官により保障されたとして、爆撃により大打撃を受けてきた漁民達も、今後は安心して漁労に従事できるようになったという。
한동안『독도』주변을 공포 속에 뺄게하던 『독도』주변공격연습은 한국및 UN군당국과의 합의로 이웃주민들의 불안을 일소케하였다고 한다.
작廿七일 군당국이 발표한 바에 의하면 지난 九월십五일 국적불명의 비행기의 폭격 사건 이래 문제●이던 독도는 그간 아정부와 UN군당국간에 완전합의를 보았으며 미국정부로서도 독도는 한국의영토의一부임을 인정하고 금후독도부근에는 폭격이 없을것이 미극동총사령관에의하여 보장되었다하며 폭격으로 인하여 대타격을 받아오던 어민들도 차후로는안심하고어로에 종사할수 있게 되였다한다.
Yabutarouさん
ReplyDelete金東祚が『獨島問題概論』を編集した当時ラスク書簡を知っていて意図的に載せなかったのは明らか。
というYabutarouさんの指摘が、いかに鋭いものであったのかが、今にしてわかりました。
塚本論文の「資料3」にある「合衆国の1952年12月4日付け通牒」
と
『獨島問題概論』英文付録6(ANNEX6、第187号覚書)1952年12月4日
という、同じ日付を持つ、いずれも「アメリカ大使館」から、「韓国外務部」に送られたふたつの文書は、やっぱり実は同じものなのでしょう。
最近になって、この「英文付録ANNEX 6」をよくよく眺めてみると、最後にetc.とあるのに気がつきました。つまりこれは、省略されている、という意味だと思います。
すなわち、実際には第187号覚書という文書には、ラスク書簡(アメリカが、独島は日本領土であって韓国領土ではないという認識を韓国に伝えた書簡)にふれた部分があるのに、1955年段階に、韓国の外務部政務局が独島関係の資料を整理するときに、あまりに韓国側に不利な情報なので、それを隠して、省略してしまった、ということなのでしょう。
韓国の外交のための参考とするべく、韓国内部の秘密文書として編纂されたこの資料集にして、実は、真実を糊塗している、つまりは仲間内をも騙そうとした、ということなのだと思います。
これまでの経緯を、ふたたび掲げます。
・・・・・・・・・・・・・・・・
最初のYabutarouさんの質問
matsu さんは『獨島問題概論』を入手されているようですが、この中で1952年12月4日に駐韓アメリカ大使から韓国政府に送られてきた文書についてどのように書かれているか教えてください。
『史的検証・竹島・独島』の214pに”同年12月4日、独島を爆撃演習地として使用しないという内容の回答文書が駐韓アメリカ大使より送られてきたことがある”とあり出典が外務部『獨島問題概論』47pとあります。
アメリカが独島を爆撃演習地として使用しないという回答した”ことを韓国政府はアメリカが独島を韓国領と認めた何よりの証拠であると主張しています。内藤正中氏の『竹島=独島問題入門』にもそのように書かれています。
しかしサン・フランシスコ平和条約における竹島の取り扱い (塚本孝) の10pを見ると12月4日の文書には次のような文章があったことがわかります。
”大使館は、外務部の通牒にある「独島」は・・・大韓民国の領土の一部である」との言明に注目します。合衆国政府のこの島の地位に対する理解は、ワシントンの韓国大使にあてたディーン・ラスク国務次官補の1951年8月10日付通牒において述べられています。”
つまりこの12月4日の文書にはラスク書簡を持ち出して竹島は韓国領ではなく日本領であることを”回答した”部分があるわけですが果たしてこの部分は『獨島問題概論』に載っているのでしょうか?『獨島問題概論』には英文附録があるようですがどうでしょうか。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これに対する私の返信
結論から言うと、『獨島問題概論』の付録にのっている英文に、該当の文章はありません。
それが、この文集の不備によるものか、あるいは故意に削除したものを載せたのか、すなわちアメリカ側の原本をさぐればこの文章があるのか、それともはじめからそんな文章は無かったのか、よくわかりません。
塚本さん紹介の「資料3」にある「合衆国の1952年12月4日付け通牒」(10p)は、この英文付録6(Annex6、187号覚書)と同じものなのかどうか。
同じもののようでもありますが、よくわかりません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そしてMakotoさんの関連のコメント
matsuさん、1952年12月4日付の米大使館からの書簡って、米国の立場は「ラスク書簡」で伝えたとおりであるとの記載のあるものではないでしょうか。もしそうであるなら韓国は官民一体となって歴史を歪曲したことになりますね。
幸い覚書の番号まで明らかになっているようですから、米国側の資料も当たって見るべきかと思います。韓国外務部編『獨島問題概論』との違いがみられるかもしれません。
2010.1.1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それに対する私の返信
おっしゃるように「米国側の資料も当たって見るべき」だと思います。
「12月4日書簡」は、アメリカから韓国に送られたわけですから、アメリカに「控え」があるか、韓国に「現物」が残っているかです。
この「付録6」は、現物ではなく、1955年の資料整理の時にタイピングされたものでしょうから、「原物」は別にあるわけです。
上記の
塚本さん紹介の「資料3」にある「合衆国の1952年12月4日付け通牒」(10p)とこの英文付録6(Annex6、187号覚書)は、別のものではないか、とも思っています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というわけで、このとき私は、このふたつは、あるいは別のものではないか、と考えていたのですが、上記のように、これはやっぱり同じものだと思います。
『独島問題概論』の序文(Chaamieyさんの翻訳を一部参考にさせていただきました)
そして47pの翻訳(再掲)、
および英文付録5、6、7の起こしは以下の通りです。
1955 韓国外務部政務局編『独島問題概論』(外務部政務局長 金東祚の序文)
ReplyDelete独島問題をめぐる韓日間の関係を全般的に把握するに当たり、関係諸位の参考に供するため、既発刊の独島問題概論を増補してここに発刊いたします。
本概論は、韓日両国間で往復された覚書を中心として整理したもので、付録は問題を理解するにおいて正確を期するため原文のまま掲載しました。
本概論は公表を目的とするものではなく、各在外公館長が本問題を正しく理解し、日本人の不当な宣伝に対備するのに参考になるものと考えて発刊したものであり、多く利用されることを望みます。
檀紀4288年5月 日 外務部政務局長 金東祚
第一章 独島についての史的考察 第3節 三 韓国民の独島への関心
(4)第二次調査団派遣と米軍機爆撃事件
47p
こうして1952年11月10日付で、外務部からこのような不祥事が再発しないように駐韓アメリカ大使館に抗議を提出した。(付録5参照)
これに対し、1952年12月4日付の第187号覚書でアメリカ大使館から、そのような事実の確認調査は時日の経過で困難ではあるが、ともかく今後は同島を爆撃演習地として使用することはないだろうという趣旨を伝達してきており(付録6参照)、1953年1月20日付の駐韓国連軍連絡基地司令部からは、爆撃演習地としてリアンクール岩(獨島)を使用することを即時中止するのに必要な措置について、すべての管下部隊に指令したと報告してきた。(付録7参照)
英文付録
ANNEX 5
NOTE VERBALE
The Ministry of foreign affairs of the republic of Korea Presents its compliments to the embassy of the united states of America and has the honor to refer to an incident caused by a U.S. Military plane on Dokto Island (Liancourt Rocks) which is a part of the territory of the Republic of Korea.
It was reported by the competent authorities that a single engine plane identified as being under the command of the United States Forces in the Far East , which appeared at 11:00 a.m., September 15, 1952 over the said island where grouped the men of the Korean Marine Corps and Korean fishers engaged in fishing, had whirled around and dropped four bombs for unknown reason, flying away southwards.
Viewing this incident with deep concern, the Ministry wishes to request the Embassy to apprise the former of any detailed information collected by the latter and it further wishes to request the Embassy to take necessary steps in order to prevent recurrence of such incident.
The ministry avails itself of this opportunity to renew to the Embassy the assurance of its highest consideration.
Pusan, November 10, 1952
ANNEX 6
No. 187
The Embassy of the United States of America presents its compliments to the Ministry of Foreign Affairs and has the honor to refer to the latter’s note of November 10,1952 stating that a single engine airplane described as being under the Command of the United States Forces in the Far East dropped bombs on Dokto Island on September 15, 1952. The embassy is advised that the limited amount of information provided in the Ministry’s note as well as the very long time which has elapsed since the incident is said to have taken place make it virtually impossible for the United Nations Command to determine the facts in the case. Preparations have, however, been expedited to dispense with the use of Dokto island as a bombing range, etc.
American Embassy,
Pusan, December 4, 1952
ANNEX 7
HEADQUATERS
KOREAN COMUNICATION ZONE
OFFICE OF THE COMMANDING GENERAL
/PO 234
20 January 1953
Dear Mr. Minister:
In response to your note verbale of 10 November 1952, addressed to theEmbassy of the United States of America, the commanding-in-chief , United Nations Command, has authorized me to inform you that he has directed all commanders concerned to take necessary action to immediately discontinue the use of Liancourt Rocks (Dokto Island) as a bombing range.
I am pleased to report that the order of the commander-in-chief is now in effect.
With highest esteem, I am
Sincerely yours,
(Signed): Thomas W. Herren
Major General, United States
Army Commanding
Honorable Cho Chong -Hwan
Acting Minister of Foreign Affairs
Republic of Korea
Pusan, Korea
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
韓国側がこの「ANNEX 6=第187号覚書」の全文を公開することは、金輪際、ありえないでしょうから、アメリカ側に残っているかもしれない「控え」を探すしかないのでしょう。
Mark Lovmo氏は、はたして、この文書を見つけては、いないのでしょうか?
Kaneganeseさん
上記ANNEX5,6,7の画像が掲載可能であれば示していただければと思います。
1953年2月27日の韓国国防部の発表は、「韓国領であるから独島の爆撃を中止するように」とアメリカに言ったらその通り中止したので、”アメリカも韓国領と認めた(ので中止した)”というロジックもしくは脳内変換だったんでしょうね、もとは。でもアメリカが明確に否定したので、今ではシンヨンハ氏くらいしか堂々と主張することをしなくなった、ということでしょう。
ReplyDeletematsuさん
私もあれから読み直したのですが、etc.が実に不自然なのは正直否めません。ただ、今実家に滞在中で、あすの夜まであまり細かい作業が出来ません。あと、ここで検討することは内容的に不可避だと思っているのですが、画像をアップするのは、少しお時間頂きたいと思います。事情は...皆さんご存じのとおりです。(困りましたねぇ...)
3つの英文付録 ANNEX の独島に関する表現を見ると次のようになっています。
ReplyDeleteANNEX5
韓国外務部 から アメリカ大使館 あて
Dokto Island (Liancourt Rocks)
ANNEX6
アメリカ大使館 から 韓国外務部 あて
Dokto Island
ANNEX7
駐韓国連軍連絡基地司令部 から 韓国外務部長官 あて
Liancourt Rocks (Dokto Island)
このうちANNEX6の「アメリカ大使館から 韓国外務部あて」で、
Dokto Island
となっていますが、これはありえない表現だと思います。
Dokto Island は韓国側の表現であって、アメリカ側がこのように「独島」だけを単独で呼ぶ表現をするはずがない。
よって、この ANNEX6は、改竄されていることが明らかです。
ANNEX7にも
(Dokto Island)と括弧の中にありますが、原資料に実際にそう書いてあったかどうかもあやしいと思います。
また、ANNEX5に
Korean Marine Corps
という表現がありますが、これは、『独島問題概論』本文44pにも「海兵」という表現があり、前後の文脈から見て「海女」の間違いであると思いますが、ここで実際にアメリカ側に送った英文にも Korean Marine Corps とあったのかどうか。
1952年9月15日段階で、独島に韓国の海兵がいることはありえない話ではないかと思います。
外務部政務局長 金東祚の序文に、
「本概論は、韓日両国間で往復された覚書を中心として整理したもので、付録は問題を理解するにおいて正確を期するため原文のまま掲載しました。」
と書かれているにもかかわらず、この英文付録は改竄だらけではないかと思います。
matsuさん
ReplyDelete”Dokto Island は韓国側の表現であって、アメリカ側がこのように「独島」だけを単独で呼ぶ表現をするはずがない。
よって、この ANNEX6は、改竄されていることが明らかです。”
鋭いご指摘、有難うございます。これはひょっとするとひょっとして...ですね。
This comment has been removed by the author.
ReplyDeleteとは言え、韓国が Dokto,Dokto と言ってきたので、アメリカが Dokto という言葉を用いて返事した、って可能性もあるかも知れませんね。もともとその手紙の主題は独島/竹島という地域限定の話ですから。
ReplyDelete特に、一回目に出てくる Dokto は、韓国側の書簡の内容を説明する部分ですよね。
それと、etc は、爆撃「等」には使わない、っていう意味ではないですか。爆撃は止めても、他に、例えば機銃掃射の演習があっても怖いですから。
2010.01.11
塚本論文に立ち返って考えて見ます。
ReplyDeletehttp://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/takeshima04/takeshima04_01/index.data/09.pdf
9/15(p83) ~ 10/15(p84)
PDFが、コピペ出来ないようになっているので、写すのが大変です。
略したところも、出来たら読んで下さい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
資料2
駐韓米国大使館臨時代理大使 E. アラン・ライトナー(E. Allan Lightner, Charge d’affaires a. i. American Embassy, Pusan, Korea)発 米国務省極東局北東アジア課長ケネス・T・ヤング(Kenneth T. Young, Jr., Director, Office of Northeast Asian Affaires)あて1952年12月4日付け書簡
(最後のパラグラフ)
伝達書を以て、我々が韓国外務部に今送った通牒の写しを送ります。
最後の段落に、11月27日付け国務省電報第365号において示唆された、1951年8月10日付けディーン・ラスクの梁大使あて通牒に言及する文言があります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「我々が韓国外務部に今送った通牒の写しを送ります」とあり、12月4日に送った通牒の写しが、アメリカの北東アジア課に送られていることがわかります。
ラスク関連部分は「最後の段落」です。
次に、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
資料3
国務省北東アジア課バーマスター(L.Burmaster)による覚書「日韓間リアンクール岩紛争のありうべき解決策(Possible Method of Resolving Liancourt Rocks Dispute between Japan and the Republic of Korea)」1953年7月22日、北東アジア課長代理マッククラーキン(Robert J. G.McClurkin)及び同課ダニング(Alice L. Dunning)あて
(略)
1951年8月10日の通牒を韓国へ出して以来、合衆国政府は、この問題に関し一度だけ追加的な伝達を行っている。これは、合衆国軍用機が独島を爆撃したとして韓国が抗議したことに対する応答として行われた。合衆国の1952年12月4日付け通牒は、次のように述べた。
「大使館は、外務部の通牒にある「独島(リアンクール岩)は…大韓民国の領土の一部である」との言明に注目します。合衆国政府のこの島の地位に対する理解は、ワシントンの韓国大使にあてたディーン・ラスク国務次官補の1951年8月10日付け通牒において述べられています。」
この通牒が出された時、以前表明された我々の見解のこの繰り返しにより、紛争からの我々の撤退と、大韓民国をして“すでに十分困難な日韓交渉に無用の問題を押し込む”のを思いとどまらせることが期待された。明らかに、我々の努力は、これまでのところ所期の効果を上げていない。
(略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この「資料3」という文書の性格は、
アメリカの国務省(外務省)北東アジア課の内部で、課員のバーマスターという人が、同じ課の、課長代理と同僚の課員にあてた提案、というところでしょうか。
ここで、この1953年7月22日の段階において、バーマスターという人は、「合衆国の1952年12月4日付け通牒」を見て、この覚書(提案)を書いています。
よって、北東アジア課には、この「通牒」の「写し」が確かに残っていたことになります。
とすれば、アメリカにはこの文書がたしかに存在するわけですが、この「合衆国の1952年12月4日付け通牒」という文書は、もう公開されているのではないでしょうか。
また、塚本氏の注ⅳ(p81)に
「本稿で訳出する文書は、いずれも、国立国会図書館の憲政資料室においてマイクロフィルムの閲覧が可能である。LOT Reel 34、0468-0651、0665-0674」
とあります。少なくとも引用された部分の英文は復元・確認できるでしょう。
Chaamieyさん
アメリカ大使館が韓国外務省に正式に送った文書の中で、Dokto island という韓国側の名称だけの表現がでるのは、やはりおかしいと、私は思います。
ラスク書簡でも、「独島又は竹島、ないしリアンクール岩として知られる島」としており、
すくなくとも、Liancourt Rocks という名前は、入ってしかるべきだと思うのです。
でも、まあ、これは水掛け論かもしれませんね。
matsuさん
ReplyDeleteLOT Reel 34、0468-0651、0665-0674は昔確認しました。
http://en.wikisource.org/wiki/Possible_Methods_of_Resolving_Liancourt_Rocks_Dispute_between_Japan_and_ROK2
http://en.wikisource.org/wiki/Possible_Methods_of_Resolving_Liancourt_Rocks_Dispute_between_Japan_and_ROK
1952年12月4日付け通牒そのものはこのマイクロにもありませんでした。
もしかしたら、韓国が隠匿しているのを知っていてアメリカは秘密解除してないのかもしれません。
OPPさん ありがとうございます。
ReplyDelete国会図書館に見に行こうと思っていましたが、便利な時代になったものです。
これで、塚本論文に載っている資料の原文が読めます。
資料2
http://en.wikisource.org/wiki/Possible_Methods_of_Resolving_Liancourt_Rocks_Dispute_between_Japan_and_ROK2
前のコメントで起こした部分
伝達書を以て、我々が韓国外務部に今送った通牒の写しを送ります。最後の段落に、11月27日付け国務省電報第365号において示唆された、1951年8月10日付けディーン・ラスクの梁大使あて通牒に言及する文言があります。
I am sending with a transmitting despatch, a copy of the note that we have just sent to the Ministry of Foreign Affairs which includes as a final paragraph the wording suggested in the Department’s telegram no.365 of November 27 and which refers to Dean Rusk’s note to Ambassador Yang of August 10, 1951.
有難い事にラスク書簡原文もリンクされていますね。
http://en.wikisource.org/wiki/Rusk_note_of_1951
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
資料3
http://en.wikisource.org/wiki/Possible_Methods_of_Resolving_Liancourt_Rocks_Dispute_between_Japan_and_ROK
前のコメントで、起こした部分
1951年8月10日の通牒を韓国へ出して以来、合衆国政府は、この問題に関し一度だけ追加的な伝達を行っている。これは、合衆国軍用機が独島を爆撃したとして韓国が抗議したことに対する応答として行われた。合衆国の1952年12月4日付け通牒は、次のように述べた。
「大使館は、外務部の通牒にある「独島(リアンクール岩)は…大韓民国の領土の一部である」との言明に注目します。合衆国政府のこの島の地位に対する理解は、ワシントンの韓国大使にあてたディーン・ラスク国務次官補の1951年8月10日付け通牒において述べられています。」
この通牒が出された時、以前表明された我々の見解のこの繰り返しにより、紛争からの我々の撤退と、大韓民国をして“すでに十分困難な日韓交渉に無用の問題を押し込む”のを思いとどまらせることが期待された。明らかに、我々の努力は、これまでのところ所期の効果を上げていない。
Since sending the August 10, 1951 note to the ROK Government, the United States Government has sent only one additional communication on the subject. This was done in response to the ROK protest of the alleged bombing of Dokdo Island by a United States military plane. The United States note of December 4, 1952 states:
"The Embassy has taken note of the statement contained in the Ministry's Note that 'Dokdo Island (Liancourt Rocks) .....is a part of the territory of the Republic of Korea.' The United States Government's understanding of the territorial status of this island was stated in assistant Secretary dated August 10,1951."
At the same time this note was sent it was hoped that this more reiteration of our previously expressed views would withdraw us from the dispute and might discourage the Republic of Korea from "intruding a gratuitous issue in the already difficult Japan-Korean negotiations." Apparently our efforts to date have not had the desired effect.
ただし、原文の影印を見ると、肝心の、二つ目のパラグラフにあるThe United States note of December 4, 1952の引用部分の翻刻では、下から2行目の一行が抜けています。正しくは
"The Embassy has taken note of the statement contained in the Ministry's Note that 'Dokdo Island (Liancourt Rocks) .....is a part of the territory of the Republic of Korea.' The United States Government's understanding of the territorial status of this island was stated in Assistant Secretary of State Dean Rusk’s note to the Korean Ambassador in Washington dated August 10,1951."
原文の影印
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0e/BurmasterP2.jpg
こういう間違いは、引用されて広がってしまうので怖いですね。直してもらうのはどうしたらいいんでしょうか。
あて名のNA - Mrs. Cunning
もMrs. Dunning の間違いですね。
それはさておき、韓国側の文書を引用した部分の日本語訳で
「独島(リアンクール岩)は…大韓民国の領土の一部である」の
…に何が省略されているのか、気になっていたのですが、
原文でみると、この部分は、
'Dokdo Island (Liancourt Rocks) .....is a part of the territory of the Republic of Korea.'
となっており、
『独島問題概論』ANNEX5
Dokto Island (Liancourt Rocks) which is a part of the territory of the Republic of Korea.
と比べると、抜けているのは、何とwhichだけですね。
なお、
>1952年12月4日付け通牒そのものはこのマイクロにもありませんでした。
とOPPさんは書かれていますが、
このサイトの冒頭に注記されている、
NARA Confidential U.S. Lot58 D118 and D637 Records of the Office of Northeast Asian Affairs, Japan Subject Files, 1947-1956, Reel39
のうちのJapan Subject FilesでなくKorea 関連で探せば何かがあるのではないかとも思います。しかし、どうやってアプローチしていいのか、よくわかりません。
塚本氏の別の論文「平和条約と竹島(再論)」『レファレンス』44-3 1994年3月に注22に、以下のような注記があり、参考になるかも知れません。
NARA:RG59,Bureau of Far Eastern Affairs, LOT 56 D527 Records of the Office of Northeast Asian Affairs Relation to the Treaty of Peace with Japan ,Box 3 Peace Treaty
NARA=米国国立公文書館
LOT 56 D527 は国会図書館のマイクロフィルムには収容されていないようですね。
ReplyDeleteConfidential U.S. State Department Special Files, Northeast Asia, 1943-1956 資料群名(日本語仮訳) 国務省 ロト・ファイル:北東アジア 国会図書館
憲政資料室に
# 国務省 ロト・ファイル:日本 (憲政資料室所蔵 LOT)
# 国務省 ロト・ファイル:韓国(憲政資料室所蔵 YE-111)
# 国務省 ロト・ファイル:北東アジア 補遺1(憲政資料室所蔵 YE-118)
があるようです。
# 国務省 ロト・ファイル:韓国(憲政資料室所蔵 YE-111)については、慶応大学図書館にも所蔵があるようですね。
Confidential U.S. State Department Special Files: Korea 1950-1957 慶応大学図書館
それぞれLOT番号があるので、分かりやすいですね。
最近ウィスコンシン大学で公開されたという外交関係のFRUS文書はこれらとは別のものなのでしょうか。LOT番号とかありません。
Foreign Relations of the United States, University of Wisconsin Digital Collections
ところで、塚本先生の上記の論文に、私が以前から知りたかったことが書いてありましたので、メモ代わりにコメントしておきます。(書き起こしにミスがあった場合はお知らせ下さい。)
ReplyDelete愈鎮午氏が崔南善氏を訪れて独島のことを聞くのは"1951年の3月末か4月初めに米国の対日平和条約草案に接し検討を開始したところ"だったと推測されます。
(p50)なお、筆者の旧稿(本稿”端書き”参照)では、このパラン島について「漢字を当てれば波浪島だろうが、詳細は不明である」とした。その後、筆者は『朝鮮終戦の記録』の著者として有名な森田芳夫先生から、韓国政府の意見書作成に参画した愈鎮午氏の回想(注50)記にパラン島に関する記述があることを教えていただいた。その要旨を紹介すれば次の通りである。
[愈鎮午氏は]1951年の3月末か4月初めに米国の対日平和条約草案に接し検討を開始したところ、帰属財産(注.在韓国日本資産のこと)に関する第四条A項や領土に関する第二条に問題があることが判明した。韓国政府としてそれに対する意見書を出さなければならないと重い、直ちに意見書作成の準備に着手した。まず初めに崔南善氏(注.歴史学者)を訪問し、歴史的に見て韓国領土として主張できる島が何々であるかを尋ねた。崔南善氏からは、独島の来歴の説明を受け確信をもてた。対馬には領有の根拠がないことを教わったが、代わりに新知識を得た。木浦、長崎、上海を結んだ三角形の中心あたりの海中に「パラン島」があり、波間に見え隠れする。我が国の領土としてこの際確実にしておくのがよいとのことであった。もしパラン島の名を条約中に明記できれば韓国の領域が 島よりはるか西南に広がるので、崔南善氏の言葉に狂喜した。・・・パラン島は自信がなかったが、例え実在しないとしても意見書中に入れておいて害はないと思い、独島とともに平和条約第二条に追加することを要求した。・・・パラン島は、1951年夏に実地調査が行われたが、ついに発見できなかった。
塚本孝「平和条約と竹島(再論)」『レファレンス』国立国会図書館、 1994,3月号
(注50) 愈鎮午「韓日会談がひらかれるまで」上『思想界』1966.2
会談の韓国側の代表に任命された愈鎮午は、韓国の領有権に関する資料を用意すべく崔南善を訪ねて「李大統領によると対馬がわが領土どであるといわれるが、根拠があるのでしょうか」と聞くと、崔南善は「にっこりと笑いながら」次のように答えたという*
韓国の木浦と日本の長崎と中国の上海をつなげる三角形の真ん中くらいにパラン島という島がある・・・・・・・水深が浅くて島の表面が海の上にでたり沈んだりするので波浪島とよばれるのかもしれない・・・・・・このたびは、それもわが領土としてはっきりさせておくのがよかろう*
(朴實「韓国外交秘史」麒麟苑 1979 P289)
上記のコメントの後半はGTOMRさんのサイトからコピペしたもので、塚本先生の論文とは関係ありません。失礼しました。
ReplyDelete1955韓国外務部政務局『獨島問題概論』の英文付録6(ANNEX6))の文献が、
ReplyDelete塚本論文「資料3」に言う1952年12月4日の「合衆国通牒」と同じ物であるにせよ、ないにせよ、
この「合衆国通牒」は、確かに韓国政府に送られ、そこにはラスク書簡に触れて「独島は日本領土であって韓国領土ではない」というアメリカ政府の認識が再確認されていたことは、上記塚本論文「資料2」および「資料3」から、明らかです。
そのわずか3月足らず後の、1953年2月27日に、
韓国政府は、「アメリカ政府も独島が韓国領土であることを認めた」という公式発表をしていることになります。
この間に、アメリカの認識が「変わった」ことを証拠だてる文献があるのかどうか。
そうした文献を示さない限り、韓国政府はこの時点でアメリカ政府の意図を歪曲して発表した、という事実を否定することは出来ないことになります。
さらに、
金東祚は、1955韓国外務部『獨島問題概論』を編纂する時に、ラスク書簡の存在を知っていたか、という問題ですが、
これは、論じるまでもない当たり前のこと、でした。
なぜなら、そもそもラスク書簡は「駐米韓国大使」にあてたものです。
外務部の高官として独島問題にタッチするようになったときに、金東祚は、当然、その経緯や内容について、十分に把握していたはずです。
よって、1955年に『獨島問題概論』を編纂する時に、金東祚は、
ラスク書簡の経緯やその意味ついても良く知っていたし、1952年12月4日にアメリカ政府がそれを再確認してきたことの意味も、十分に知っていたことになります。
そして、彼は、ラスク書簡をめぐる経緯について『獨島問題概論』に載せようとはしなかった。
アメリカ政府の「独島は日本領土であって韓国領土ではない」という認識を、彼は、韓国の「各在外公館長」には知らせないことにし、ひいては国民にも隠そうとしたわけです。
では、ラスク書簡の存在が、一般に知られるようになったのは、一体いつからでしょうか。
確認できるのは
塚本孝「サンフランシスコ条約と竹島~米外交文書集より~」『レファレンス』33-6
1983年6月、からです。
そして、おそらく、これが最初なのではないかと思います。
この段階では、まだ会談に同席したアメリカ政府官僚(北東アジア課朝鮮担当官エモンズ)の記録を引用して一部が出ているだけで、ラスク書簡全体はわかっていません。
塚本孝「平和条約と竹島(再論)」『レファレンス』44-3
1994年3月、にいたって初めて、ラスク書簡の全貌がわかったことになります。
この塚本氏の2本の論文は、ぜひ、英訳してほしいものです。
日本政府は、こうした論文集を英語でひろく発信すべきだと思います。
2010.1.17.
最大の 不利な資料は カットして
ReplyDelete見事に揃う ドクトは我が土地
韓島守
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ReplyDeleteラスク書簡の紹介ですが、上記1984年の塚本論文より早く、
ReplyDelete1978年7月に次のような論文がありました。
花井浩司「竹島解決への新たな提案」(今日の焦点 国際)『月刊社会党』日本社会党中央本部機関紙局1978年7月 通号261
http://opac.ndl.go.jp/articleid/1889116/jpn
以下引用
180p
最近「1951年の米外交文書」が公表されたが、ヤン駐米韓国大使が竹島の領有権を主張したのに対し、ダレス国務長官は「われわれの情報によれば、竹島は1905年頃から韓国の一部として扱われたことがなく、島根県陰岐支庁(ママ 隠岐支庁か)の管轄下におかれている。それ以前においても韓国が領有を主張したことはない」と日本の固有の領土であることを韓国側に通告している。(51・8・10国務省覚書)
この論文の著者は、「花井浩司 国際問題研究家」とあります。
『月刊社会党』は社会党の機関紙ですが、花井浩司という人は国際問題の担当だったようです。国会図書館の論文リスト(雑誌記事索引)によれば、時事的な国際問題を継続して扱っていた人のようです。
この論文では、竹島問題を、国際司法裁判所に「応訴管轄(フォルム・プロロガチューム)」という原則により提訴することを提案しています。
この原則は、当事国間に合意の意思が存在せず、相手国の応訴の意思が不明なままに他方の当事国が一方的に国際司法裁判所へ提訴し、訴えられた国が、後から応訴の意思を示し裁判が成立することをいうものだそうです。
「応訴管轄(フォルム・プロロガチューム)」ということについて、よく知りませんが、どなたか教えてください。
2010.02.17
応訴管轄は、本来、その裁判所にはその事件を管轄する(審理する)権限が無い場合でも、たまたま何かの事情によって訴訟が提起されたときに、相手方が応訴をしたならば結果として裁判所の管轄権が成立する、という仕組みです。
ReplyDelete国際司法裁判所への提訴が成立するのは二国間の合意があることが前提となっていますから、原則としては、一方の国が合意なしに提訴したとしても国際司法裁判所にはその訴訟の管轄権は発生しません。
しかし、もし相手国がその裁判に応ずるならば裁判を行うという考えが国際司法裁判所にあるのならば、それは応訴管轄を認めているということになります。国際司法裁判所が応訴管轄を認めているのかどうかは知りません。
2010.02.18
Chaamieyさん
ReplyDeleteありがとうございます。
>国際司法裁判所への提訴が成立するのは二国間の合意があることが前提
とすると、なかなか難しいのですかね。
しかし、当時の社会党の機関紙で、このように
竹島問題は国際司法裁判所に提訴すべきだ、という主張をしているのは面白いです。
1978年7月というと、まだ朴正煕の暗殺以前の軍事政権の時代ですが、
当時の社会党は、「反『韓国』」という構図だったのですかね。
ところで、北朝鮮側が、
「韓国が戦後になって始めたもの」であるところの独島領有権の主張に、
いわば「同調」して、竹島問題に言及してくるのは、意外に遅いのではないか、とも思います。
2010.02.20
>とすると、なかなか難しいのですかね。
ReplyDelete一方的に提訴して国際司法裁判所が応訴管轄をどう取り扱うかに賭けるというのは冒険ですから、普通に考えればできることではありません。あくまで、この問題の解決に向けての機運が整っているかどうかという状況によります。
>当時の社会党は、「反『韓国』」という構図だったのですかね。
「親北朝鮮」だからその結果として「反韓国」だったのでしょう。どちらも同じ軍事独裁政権であったとしても。
2010.02.20